帰省してきた弟が実家に恋人を呼びつけた「ちいさ……」
初めて会った姪の顔を見るなり、弟はそう言って固まってしまった。
夏が始まりかけた深緑の季節、一時的に実家に帰省している私に合わせ大阪にいる弟が姪に初対面するべく帰ってきた。
兄弟でそっくりと幼い頃からよく言われ続けてきた真っ黒い瞳が困惑げに私の腕の中ですぴすぴ眠る存在を見つめている。
「抱っこする?」
「いい、大丈夫」
相変わらず慎重で心配性な弟は、限りなくひそめた声で首を横に振った。
「なんか、意外とちゃんと似てるってわかるんだ」
「ね。今寝てるからわかんないけど目開くと私に似てるってすごい言われる」
「口とか鼻は匠くんっぽいね」
聖臣はまじまじと興味深そうに娘の顔を覗き込むが、それでも決して触ろうとしないあたりが彼らしい。
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