約束の守り方を教えて「──もう、グウェンに近付くな」
凍てつく夜の中、僕の手を生温いものがとろとろと濡らしていく。風と一緒に消え去ってしまいそうなこの頼りない温度が、目の前の命そのもののように思えて、僕は嫌だと首を振った。
「警部、警部、」
「いいな、約束だ」
指先を染めた熱は、みるみるうちに、つめたく固く冷えていく。嫌だ。もう一度首を振る。僕は約束を守れなかった。グウェンも守れなかった。そんな僕に、もう大事な誰かを得る資格なんかない、新たに探す気なんかない、だから、だから。
「なあ、ウサギとカニどっちがいい?」
「………っ⁉︎」
突然、掛けられた声に飛び起きた。身体の上を覆っていたものを蹴り飛ばし、センスの報せる方へとウェブを撃つ。何度も。
4828