タイトル未定 第3話 暖炉の火というものがこんなに温かいものだと晶が知ったのは、この世界に来てからだ。
肌で感じる熱もあるが、その揺らめく橙色を眺めていると胸の内側から温められていくような気分になった。静寂に沈む中、或いは朗らかなお喋りの合間に控えめに弾ける薪の音に最初の頃は驚いていたのを思い出す。
……と、そんなふうに閑かに過去を振り返る余裕は、今の晶にはない。
「それでね! レノックスは本気の告白の時、真顔かな? 照れてるかな? って話になって」
「わあそれ、すごい気になる! レノさん、どうするんだろう」
「面白そうだな、そういうの。俺達もすればよかった」
「そうかな……? 西の魔法使いならではの話題な気がするけど」
雛鳥の囀りにも似た会話は賑やかで、テンポが早い。晶がホットミルクに口を付けている間にも、次の話題へとぽんぽん転がっていく。
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