cyberpunk2077風〜……ルマァ……「久しぶり『マーヴェリック』」
グリッチに犯された視界から見えるその顔は、確かに、見覚えのある。だが記憶の中のあの子より大きくて、父親に似た口髭に、この街じゃ時代遅れなアロハシャツ。
「油断しすぎじゃない?アンタ、伝説の傭兵でしょ?……でも、昔からそうだったよね、俺に対してはさ」
「ッ、君は、」
久しぶりに聞く声はすっかり声変わりしていてこんな状況ながらこの子が無事成長したことに安堵する。密やかに追っていた君の消息がある時から一切掴めなくなった。それからずっと、君を探し続けてた。
「ブラッドリー、どうして」
「あぁそうだった。『ブラッドリー』はもう死んだよ。裏BDでイカれた男に刺されて呆気なく死んだんだ、ほら。」
腰に刺していたリボルバーを抜き、左脇腹に残る痛々しい傷跡を見せる。碌な手当も出来ず応急処置として傷跡を焼いたのか、火傷の痕がついている。痛かっただろうに、僕はその場にいてあげられなかった。
「俺は『ルースター』。ここファイタータウンの新しいフィクサーだよ。よろしくね、『マーヴェリック』」
視界にノイズが走る。エラーメッセージを読む間も無く視界がブラックアウトした。
ブラッドリーは乗り物が好きな子だった。車に乗るのも、キャロルには怒られたけどバイクの後ろに乗るのも大好きだった。でも1番好きなのはNCARTに乗って窓からの景色を眺めること。窓に貼り付いて宝石のような瞳で街を眺める君を守ることが、僕の生まれてきた意味だと思った。
「おはようマーヴ」
オプティクスが壊れたかと思ったけど、目が覚めて視界に入ったブラッドリーの顔で無事を知る。どこかのペントハウスだろうか、ナイトシティの夜景を一望できる壁一面の窓ガラスに、金や赤の派手な装飾の付いた家具は僕には縁のないものだった。
「どう?この部屋。俺、頑張ったんだよ?アンタに捨てられてからこの街で1人で生きていくために、色々やってきたんだ」
「……君が、生きてて良かった」
「はァ……?何だよアンタ、今更、生きてて良かったって、俺を捨てて出てったくせに!」
片腕で首を掴んでそのまま持ち上げられる。すっかり変わってしまったけど、瞳だけは、昔と変わらない。本当は寂しがり屋で優しい君。
「げほっ、ごほっ」
「まぁいいや……良い?あんたは俺の依頼を受けた。この依頼が終わるまであんたは俺のもの。この関係は絶対、分かるよね?」