「……これは?」
目の前には顔を真っ赤にした上の弟と、てきぱきと皿やフォークを並べていく下の弟。皿の上には出来立てのパスタが、真っ白な湯気を立てている。
事の起こりは三十分ほど前に遡る。
珍しく仕事も外出の予定もない日曜日。今日はもう一日家の中で過ごそうと決め、ソファで新聞を読んでいると九郎がぽつりと訊ねてきた。
「昼飯どうしましょうか」
つられるように壁掛け時計に目をやると、そろそろ昼前だ。今日は家には自分と九郎、それから範頼の三人。常ならば人数が多い日は外食をすることがほとんどなのだが、こう暑いと家を出るのも億劫だ。頼朝はやや思案すると、こう見えて料理の得意な下の弟に「なんでもいいから作ってくれるか」と頼むと、彼はキッチンへと向かうと冷蔵庫や戸棚の中を確かめ始めた。
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