保育園がお休みの日の夜。
おかーさんとおとーさんが公園に連れて行ってくれた。
なんで夜なんだろうとかも思ったけど、ひさしぶりに行く公園とか、いつもとちがう夜に出かけることとか、おかーさんとおとーさんと一緒にあそびにいくこととか、いろんなことが嬉しくて喜んでた。
ぞう組になるちょっと前から、公園にあそびに行かなくなった…と思う。
保育園のお友だちは休みの日には公園に行ったり遊園地に行ったりお友だちのお家に行ったりした話をよくしてるのを、いいなあと思ってた。
ぞう組になるちょっと前に、おかーさんとおとーさんはすっごくけんかをしてた。それからおかーさんとおとーさんは優しくなくなった。
一緒にあそびに行かなくなった。
怒るとたたくようになった。
お腹が空いても、ごはんをた食べないことがあった。
保育園に行く時間がおそくなって、お迎えにくるのがはやくなった。
おとーさんはずっとお家にいるようになった。
わからないことばっかりだったけど、おかーさんもおとーさんも変わったことはわかった。
そんなふうになったおかーさんとおとーさんが公園に一緒にあそびに行ってくれた。
「好きに遊んでいいよ」って言われてひさしぶりの、はじめての夜の公園をいっぱいあそんだ。遊具が見にくくてぶつかりそうになったり転んだりしながら、夜の公園をたのしんだ。
そして、気づいたらおかーさんもおとーさんもいなくなってた。
すてられた。
ってなんとなく思った。
まわりを見ても、暗くてどこからきたかわからなかった。
しばらくして、静かで暗い夜の公園が怖くなって、そこに小さく座った。
おばけが出てくるかもしれない。怖い人がくるかもしれない。
だけどどうしていいかわからなくて、ただお留守番するときみたいに小さくなった。
そんなときに
「おい」
そんな声がしてびっくりして顔をあげた。
そこには知らない人。
知らない人に話しかけられたら助けてっておおきな声で言うって先生が言ってた。
だけど、びっくりして声はでなかった。
「お前、1人なのか?親は?」
そうきかれてすぐに首を横に振る
「なら警察に…」
「い、いや!」
「はあ?だったらどーすんだよ…」
けいさつは、悪い人が行くところだ。
先生に怒られたお友だちがよく言われてた気がする。
そんなところに行きたくない。
やっとの思いで声が出た。
だけど、それと同時に涙が出てきた。
「って泣くな!わかったから!」
その人は泣いてるのをみて、しゃがんで頭を撫でてくれた。
すると少し嬉しくなった。
こんなこと、ひさしぶりな気がする。
「とりあえず一緒にいてやる」
「…うん」
「…いいか?」
「うん」
悪い人は車に乗せてどこかにつれて行ってしまって帰れなくなるんだって先生が言ってた。
だけど、この人は泣いてると近くにいてくれて頭を撫でてくれた。
だから悪い人じゃないのかもしれない。
そう思うとなんだか余計に涙が出てきて、それからねむたくなってきた。
「お、おい寝るなよ?」
「うーん…」
「おーい…えっおい!?寝た!?はや!」
おにーさんの声がきこえなくなってきて、そのまま寝てしまった。
*
なにか音がきこえておきた。
…お家じゃない。
何もわからないまま起き上がると知らないお部屋に知らない人がいた。
ぼーっとお家のことをしてるその人の後ろ姿を見ていると、たまたまこっちを見たときにびっくりしてた。
「お、起きてたのか…」
その人は手を止めて前に座る。
おにーさんの顔を見て、昨日のことを思い出した。
「あー…大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
「その、昨日のこと、覚えてるか?」
「うん。かーさんとおとーさんに捨てられちゃったの」
「………」
わかることを伝えたら、なぜか頭を撫でられた。
それにちょっと嬉しくなる。
「なんで警察に行きたくなかったんだ?」
「だって、警察は悪い人がいくところだから…もしかして、悪い子だから捨てられちゃったの……?」
「ち、違う!…と思う。とりあえず、わかった。うん」
「?」
おにーさんに警察のことをはなして、わかってしまった。
悪い子だから捨てられて、それで警察に連れていかれちゃうんだ。
そう思うとなんだか泣きそうになった。
そうするとおにーさんはいそいで首を横に振った。
「警察には行かない。…警察についての説明も大変そうだしな……」
「い、いかないの?」
「行かないから安心しろ」
「うん!」
警察には行かないときいてホッとした。
良かった。おにーさんはやっぱり優しい人なんだ。
「そうだ。お前、名前は?」
「ちづるです」
「俺は八汐路弦だ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
「………はぁ」
なにがよろしくなのか、この後なにがどうなっていくのか、おにーさんはどうして落ち込んでいるのか、何もわからなかったけれど、とても安心したことだけはわかった。