お慕いしています ようやくベッドから起きられるようになったマトリフは、さっそく部屋から抜け出していた。
「ったくよぉ……」
マトリフの手には杖があった。片脚の固定はまだ取れていない。回復呪文の使用は体力回復の妨げになるといって使用を禁止され、ただ自然治癒に任せていた。
しかしあてがわれた病室は常に神官がいて息が詰まる。ときたまやって来る大臣の嫌味も聞き飽きた。もうやってられないと、マトリフはなんとか神官の隙をついて部屋を抜け出してきた。
「ふぅ……はぁ……」
マトリフは少しも歩かないうちから息が切れはじめた。ずっとベッドで寝ていたからすっかり体力も筋力も落ちている。やはり部屋で大人しくしておくべきだったかと思っていると、若い神官がこちらへ走ってきた。
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