煙草を片手に携帯を握りしめながら眉間にシワが寄る。
コツコツと靴で地面を叩く音もそれに合わせるかのように段々大きくなっていた。
進まない時計を見ながらハァと大きくため息をつく。
ここ数日、時間が経つのがやけに遅く感じるのは出張前に口喧嘩をしたきり残してきてしまった恋人のせいなのはわかりきっていた。
予定よりも仕事が早く切り上がり
「せっかくだから慌てずもう一泊していけばいいのに。」
という先方からの気遣いの言葉にも失礼がない様、自分ができる限りのぎこちない笑顔で頭を下げ早々に荷物をまとめた。
いつもより静かな携帯にもう一度手をやると写真フォルダにはとっくに送っているはずの写真が溜まっている。
こういう時に限っていつも以上に見せたいものや喜びそうなものがたくさんあるのだ。
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