『引き返したくなったら直ぐ鳴らして下さい。いつでも出れるようにしといてあげますから』
『ほんま、いちいちうっとい言い方やのぉ』
『それ程でも〜』
そんな軽口で交わした言葉を最後に、あの人からの電話の着信が鳴ることは無かった
「せっかく変えたのに、着信メロディー…貴方からやって直ぐに分かるように」
空調で少しだけ湿気の取れた指紋の跡だらけの画面をスクロールする、したとて変わりのない画面。今すぐにでも電話のアイコンに切り替わらんかなと期待してる自分が居るぶん、虚しさを感じた。
「鳴らんのなら、変えようかなぁ」
260