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    kk_69848

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    kk_69848

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    コラボグッズのキキ◯ラな蔵種です。
    時代設定は気にしないでください。

    キキ◯ラ蔵種W杯準々決勝、フランス戦。激戦を終えた俺─白石蔵ノ介は、他の日本代表の選手達と共に、選手タウンの宿泊棟に戻った。
    ほんで宿泊棟に入ってすぐに、いつもとは違う光景に気付いた。ロビーの机の上に、一人では抱えきれんほどの、沢山のぬいぐるみが置いてある。
    「え、何ですかこれ」
    机に並んどるのは、白やピンク─かと思えば、青や黒もある、様々なふわふわの塊たち。見覚えがあるような無いような、名前まではパっと出てこん、絶妙なラインナップのぬいぐるみ達。
    側に立っとった黒部コーチが、勿体ぶりながら俺達の顔を見回し、口を開く。
    「白石くん、フィギュアスケートって見ます?」
    「TVでなら、たまに」
    「黄色いクマのぬいぐるみが、スケートリンクに投げ込まれるのを見たことは?」
    「あぁ、ありますあります」
    その選手が好きだというぬいぐるみが、えげつない量投げ込まれているのを、以前TVで見たことがあった。
    「それに影響されたのでしょう。スポンサーの方から依頼がありましてね。選手とぬいぐるみで写真を撮って、SNSにアップしてほしいと」
    「ぬいぐるみと写真?」
    それは随分とむちゃくちゃな話や。そう思っていると、後ろから軽やかな笑い声がした。
    「ははは、中学生は大変やなぁ」
    「種ヶ島くん、君達もですよ」
    「えっ、俺らも?」
    振り返れば、きょとんとした顔の種ヶ島先輩がおった。先輩のくりくりとした瞳が、ぬいぐるみみたいに輝く。
    「俺や奏多ならともかく、他の高校生の奴らはキツいやろ」
    「……ですので、なるべく中高生でペアになって撮影をしてほしい、とのことです」
    「ペアかぁ」
    高校生の先輩達の顔を思い浮かべれば、ペアになったところで、どうにかなるとも思えへんかったけど。頼まれとるんやったら、特に断る理由もない。ほんで俺が高校生とペアになるんやったら、あの人としか考えられへん。
    「せやったら、俺はキミ様と─」
    「困りましたねぇ。私の方のスポンサーの意向も、確認しなければ」
    キミ様は携帯電話を取り出して振り向くと、どこかへ電話をし始めた。それを横目に俺は、手持ち無沙汰にその場に佇んだ。
    今日、俺はキミ様とダブルスを組ませてもろた。結構息の合ったプレイが出来たと思うし、以前よりキミ様と親密になれたと思う。
    せやから、スポンサー的にオッケーなんやとしたら、キミ様と一緒に撮らせてほしいって思ったんやけど。ふと気が付けば、いつの間にか丸井クンがキミ様の横に立っとった。
    「……っ」
    電話するキミ様の横で、丸井クンが俺に向かって無言で手を合わせる。そういえば、丸井クンはキミ様のファンやった。ここは譲ったった方がよさそうや。
    しかしそうなると、俺がペアを組む相手が居ない。合宿からW杯と、色んな先輩と交流させてもろたけど。特にこの先輩と言えるほど、特別に親しい先輩はおらんかった。
    「何やノスケ余っとるん? ほな俺と組もか」
    「えっ」
    突然種ヶ島先輩に声を掛けられて、俺は戸惑った。確かに種ヶ島先輩には、このW杯で色々と─いや、かなりお世話になったし、尊敬もしとる。俺にとっては唯一無二の、かけがえのない先輩や。
    せやけど周りの皆は、そんな事情は知らへんし。いつの間に親しくなったんやって聞かれたら、理由を説明するのが少し恥ずかしい。
    「どのぬいぐるみにする? 好きなのある?」
    しかし種ヶ島先輩は、俺の葛藤など知らずに(まだペアを組むって言うてへんのに)、勝手にぬいぐるみを選びはじめている。
    「や、あの」
    「どれもかわええなぁ」
    せやけどこうなったのなら、強く断る理由もない。もし他の人に、何で種ヶ島先輩とペア組んだんやって言われても、強引に組まされたって言えばええんやし。実際にそれは、事実やし。
    そう思っとると、種ヶ島先輩がぬいぐるみの山の中から、二つのぬいぐるみを持ち上げた。
    「あ、これええんちゃう?」
    種ヶ島先輩の手の中にあるのは、水色の髪の男の子と、ピンク色の髪の女の子のぬいぐるみ─
    「リトルツインスターズ、ですね」
    電話を終えたらしいキミ様が口を挟む。
    「えー、これキキララちゃうん?」
    「そちらは愛称です」
    「へぇ、そうなん。これにしよかな」
    「いいんじゃないですか。今日の白石くんに、相応しいかと」
    「あ……」
    俺は反射的に下を向いた。
    俺は今日、星の聖書を完成させた。それはキミ様と、種ヶ島先輩の力添えがあってこそや。
    ギリシャ戦から今日まで、うじうじといじけとった俺は、みっともなくもあったけど。同時に今日という日が輝かしく、誇らしくもあった。
    「星の子、や」
    パステルカラーでふわふわのぬいぐるみ達は、名前の通りキラキラと輝いて見えた。
    「ほな俺はこっちの男の子な。ノスケはこっち」
    種ヶ島先輩は水色の髪の男の子のぬいぐるみを持つと、ピンク色の髪の女の子のぬいぐるみを俺に渡した。
    「え、俺女の子の方ですか?」
    「別にええやろ?」
    「恥ずかしいから、男の子の方くださいよ」
    「嫌や。俺水色好きやし」
    「えぇ」
    さすがにピンクのぬいぐるみを持って写真を撮るのは、少し恥ずかしい。しかし種ヶ島先輩はお構いなしに、ポケットから携帯電話を取り出すと、カメラをこちらに向けた。その携帯越しに、キミ様の隣ではしゃぐ丸井クンが見える。
    どうやら交渉は成立したらしい。
    「あ、そうだ白石」
    丸井クンが、キミ様とぬいぐるみを選びながら振り返った。
    「ちなみにララって、お姉さんらしいぜ」
    「お姉さん?」
    それは多分、こっちのピンク色の女の子。そうなると─
    「こっち弟?」
    水色の男の子─恐らくキキを持って、種ヶ島先輩が頓狂な声を上げた。俺は何やら可笑しくて、種ヶ島先輩とぬいぐるみをジロジロと眺めた。
    「ふふ、弟。ふふふ」
    「なに笑てんねん」
    「やって」
    俺がお姉さんのぬいぐるみで、種ヶ島先輩が弟のぬいぐるみ。それが妙にツボってしもて、俺の肩を何度も震わせた。
    「ええですよ。俺、お姉さんですから。水色は譲ったりますわ」
    「ほな俺は弟やから、姉ちゃんに甘えたろ☆」
    そう言って種ヶ島先輩は、俺の肩に頭を乗せた。
    「……っ」
    「はい、チーズ」
    ピンク色のぬいぐるみと、俺の顔と、種ヶ島先輩の顔と、水色のぬいぐるみ。それらがどう写真に収まったのかは、俺にはよう分からへんかった。ただきっと、俺の顔は赤くなっとったから。ピンク色のぬいぐるみで上手いこと誤魔化されてへんかなって、祈るしかなかった。
    「SNSに載せとくな。アドレス、教えとくわ」
    「あ、はい」
    種ヶ島先輩と連絡先を交換して、俺のアドレス帳は1件増えた。その数字が何だか、特別な物に思える。
    「それにしても、ラッキーやったなぁ」
    「はい?」
    「今度はサンサンに、取られずにすんだわ」
    「え、どういう……?」
    俺が質問する前に、種ヶ島先輩はさっさとぬいぐるみの山に向かって行ってしもた。そのまま半魚人のぬいぐるみを持って、大石クンと越知先輩に薦めとる。
    「……ふぅ」
    一仕事終えた俺は皆の邪魔にならんよう、壁の方へと少し下がった。
    今日は色んなことがあった。俺は負けたけど、次に試合があれば絶対に勝つし。次の準決勝も、誰が出るのかは知らんけど、日本代表の皆も絶対に勝つ。
    俺は満ち足りた気持ちで、皆の顔一人一人を眺めた。そしたら種ヶ島先輩と目が合うて、パチリとウィンクをされた。
    「わ……」
    あの人は、ほんまに。色んな人にああいうこと、しとるんやろうけど。俺は居ても立ってもいられんくなって、「写真撮りますよ」って言うて、色んな人達の写真を何枚も撮った。

    その後、俺と種ヶ島先輩とキキララの写真は、SNSでちょっとバズったらしい。日本に帰ってから友香里から聞いて、俺はちょっと、もぞもぞした気持ちになった。
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    gohan_oic_chan

    PAST行マリ
    卒業後同棲設定
    なんか色々最悪です
    証明 朝日を浴びた埃がチカチカと光りながら喜ぶように宙に舞うさまを、彼はじっと見つめていた。朝、目が覚めてから暫くの間、掛け布団の端を掴み、抱きしめるような体勢のまま動かずに、アラームが鳴り始めるのを待っていた。
     ティリリリ、ティリリリ、と弱弱しい音と共に、スマートホンが振動し始める。ゆっくりと手だけを布団の中から伸ばし、アラームを止める。何度か吸って吐いてを繰り返してから、俄かに体を起こす。よしっ、と勢いをつけて発した声は掠れており、埃の隙間を縫うように霧散していった。
     廊下に出る。シンクの中に溜まった食器の中、割りばしや冷凍食品も入り混じっているのを見つけると、つまみあげ、近くに落ちていたビニール袋に入れていく。それからトースターの中で黒くなったまま放置されていた食パンを、軽く手を洗ってから取り出して、直接口に咥えた。リビングに入ると、ウォーターサーバーが三台と、開いた形跡のない数社分の新聞紙、それから積み上げられたままの洗濯物に囲まれたまま、電気もつけずに彼女はペンを走らせていた。小さく折り曲げられた背が、猫を思わせるしなやかな曲線を描いていた。
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