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    kk_69848

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    10年後くらいに、芸人になったハラテツのラジオ番組のゲストに、プロ選手になった白石が出演する話です。

    蔵種前提ラジオはい、こんばんは。ハラテツdeナイトの時間やでぇ。パーソナリティはお馴染み、突っ込み自動販売機こと原哲也が生放送でお送りすんで。
    ほんで早速やけど、ここでゲストの紹介や。今をときめくプロテニスプレイヤー、テニス界のプリンス─って何でやねん! 誰がやねん! どないやねん!
    「ちょお、ちゃんと紹介してくださいよ」
    勝手に紹介前に喋んなや。はい、中学の後輩の白石です。
    「こんばんは。白石蔵ノ介です」
    腹立つわぁ、何やねんそのええ声。
    「すんません。生まれつきなんで」
    よう言うわ。こいつ中1の頃なんて、ヒヨコみたいにピヨピヨ言うとったで。
    「ピヨピヨて」
    なぁ、懐かしいわぁ。ワテらテニス部でな、白石が1個下の後輩やったんやって。
    「俺が部長で、ハラテツさんがヒラ部員やったんですよね?」
    ヒラ部員って誰がやねん! どないやねん! オムツ替えてもろた恩義はないんかい!
    「オムツは替えてもろてないですよ」
    こいつがなぁ、ワテを部長の座から引きずり下ろして、オサムちゃんも顧問の座から引きずり下ろして。
    「……?」
    オサムちゃんなぁ、漁船から引きずり下ろされて死んだんやって。
    「えっ、そうなんですか?」
    や、突っ込まんかい!
    「あ、はい」
    遅いねん! 鈍いねん! お前とおると疲れんねん!
    「……」
    ガチへこみすなっ! はい、そんな白石にぎょーさん質問来てます。◯◯県◯◯ちゃんからのメールです。
    『先日の試合お疲れ様でした。いつも応援しています。ところで白石さんの、恋の噂を全然聞きませんが、理想が高いって本当ですか? 白石さんの好きなタイプを教えてください』
    はい。こういうしょーもないメールが、1億通くらい届いてます。
    「しょーもなくはないでしょ。俺の好きなタイプ、興味ないんですか?」
    あるかアホ。
    「ほな、ヒント出しましょか?」
    止めぇや。合コンちゃうで。
    「えー……。大和撫子です。俺の好きなタイプ」
    は? 戦艦ヤマト?
    「そうそう、こうね、どっしりと構えた……」
    ん? どないしたん? 電池切れたか?
    「や、戦艦ヤマトの知識が無くて」
    アホか。
    「何で俺、下調べしてこんかったんやろ」
    頑張れや。頑張れば勢いで乗り切れるて。
    「ホンマですか?」
    ホンマホンマ。
    「俺のタイプは! 戦艦! 大和! です!」
    こいつオモロないけど、根はいいヤツなんで。皆さんそれだけは覚えて帰ってください。
    「はは」
    ははちゃうで。ほんで理想は高いんか?
    「はは。全然」
    これは高いな。ほな次のメールです。◯◯県の◯◯ちゃんから。
    『ハラテツさん、白石さん、こんばんは』
    はいこんばんは。
    「こんばんは」
    『私は20才の大学生ですが、彼氏がいたことがありませんし、性体験もありません。周りの友人は、みんな既に経験していて焦ります。無理をしてでも、彼氏を作った方がいいでしょうか?』
    はい、絶頂な白石さん、どうですか?
    「え、結構ストレートな質問ですね」
    まぁこれくらいの年頃やとな、悩むんやろな。
    「や、でも普通やないですか? 20才で経験なくても」
    えー、遅ない?
    「ええっ。そう言うハラテツさんはいつなんですか?」
    ワテに聞く? 15。
    「15? 素行悪いわぁ」
    ほな白石はどないやねん?
    「や、俺は20才の時でしたわ」
    遅っ。その顔で?
    「顔は関係あらへん。顔で年齢決まるんやったら、苦労しませんわ」
    やー、でもまぁ20才ん時なんやろ? やっぱりそれくらいまでに経験するのが、自然ってことちゃうん?
    「や、20才でも早いですって。俺もその時は全然、そういうつもりやなかったし」
    ほな、どういうつもりやったん?
    「先輩に、温泉旅行に誘われたんですけど。俺はほんまに、普通に温泉を楽しむつもりやったんですよ」
    そんなことあるか? 男と女が温泉行って、何もせんことある?
    「や、男の先輩やったんで……」
    え。それ話してもええやつ?
    「あー。ダメでした?」
    知らんけど、まぁ止めとこか。
    「……はぁ」
    えーっと、ほな◯◯ちゃんへのアドバイスやけど。年齢的には経験しておいてもええかなって思うけど、無理にするもんでもないな。とりあえず周りのダチに、ええ男紹介してもらい。付き合わんでもええけど、知り合いが増えるのはええことやからな。
    「……」
    そない深刻な顔すんなやぁ。これラジオやでラジオ。
    「や、そんなにまずいですかね? 男同士って」
    えー、◯◯ちゃん。女同士も視野に入れろとの、アドバイスが入りました。
    「俺はその人のこと、今も好きなんですけど」
    え、そうなん?
    「っ、はい」
    ほんならよかったわ。や、そういうつもりはなかったとか言うから、てっきり……。や、ほんまによかった。好き同士やったんやろ? ひゅーひゅーやな。
    「や、向こうがどう思っとるかは、ちょっと……」
    ええ加減にせえよ! お前が一方的に好きでお前がそんなつもりなかったのに、そういう事になる訳があるか!
    「や、多分、俺の身体目当てなんですよ」
    何でやねん! どないやねん! どんな大和撫子やねん!
    「そういう意味では、戦艦ヤマトの方が近いかもしれへんですわ」
    ヤマトは戦わずして沈むんやって。お前が沈められとるやん。
    「ほな、俺が戦艦ヤマト?」
    もうそれでええわ。お前がヤマトや。
    「あ、メール来とる」
    ヤマト本番中やで? 携帯の電源は切っとけや。
    「ふふ」
    ふふちゃうで。メール見んなや。
    「『俺は大和撫子や』言うてます」
    え、ナデシコ今ラジオ聞いてくれとるん? 何やねん仲ええやん。もう勝手に末永く─あっ!
    「はい?」
    ……すまん。差出人の名前、見えてもうた。
    「あっ」
    あー、あの人かぁ……。
    「別に知られても、気にせん人やと思いますけど」
    知っとるけど……、や、そうかぁ。あー。
    「……」
    ちょお、今日もう話す気にならへんわ。残りの時間、お前が喋れや。
    「ええんですか? めっちゃオモロいトーク、考えてきたんですよ」
    やっぱりワテが話すわ。

    その晩、いつも通りハラテツのトークは冴え渡ったが、どこか一抹の侘しさがあったという。
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