ひみつのこーい「シライさん、今から夕飯ですか?」
シライが自室のドアを開けると、たまたま前を通りかかったアカバが声をかけた。まるで人懐っこい犬のように、嬉しくてたまらないという顔をしている。アカバはシライの前では、いつもこうなのだ。
「ああ。おまえもか?」
「わしはもう済ませました。これから風呂です」
「へえ」
「じゃあ、また」
「アカバ」
「……あ」
ドアを開けたままその名を呼んでやれば、少し神妙な顔したアカバが、黙ってシライの部屋の中に入った。さっきまでは犬だったのに、今は借りてきた猫のようだ。
「座れよ」
「……はい」
アカバは言われるまま、いつものようにベッドの縁に座った。シライもその隣に座る。
「どうだ? 調子は」
「はい。絶好調です」
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