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    kk_69848

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    kk_69848

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    まだ喧嘩してます
    ※リバっぽい表現がありますが、絶対にリバにはなりません

    second virgin6(上) 俺はこっそり玄関の扉を開けると、これまたこっそりゆっくり鍵を掛けて、足音を立てへんように階段を登った。自分の部屋の前まで来ると携帯が震えて、修二さんからのメッセージが表示された。
    ─次いつ会える?
    「……っ」
     今日遊園地からラブホテルに行って、少し喧嘩してしもたけど。またこれからも今まで通りお付き合い出来そうやなってえらい安心して。俺はその晩、貰ったチョコレートを枕元に置いて眠った。
     翌朝、修二さんからのメッセージに俺は「2週間後の日曜日はどうですか?」って返信した。俺はまた直ぐにでも修二さんに会いたかったけど、部活をサボっとると思われてもあかんし、それぐらいが丁度ええかなって思ったんやけど。
     修二さんからは「午後からならええよ。カラオケでも行く?」って返信が来て。カラオケかぁ久し振りやな思て。早速発声練習を始めたら、隣の部屋の友香里に「クーちゃんうっさいわ」ってどやされた。

     待ちに待ったデートの日。俺は午前中だけ部活に行くと、「ちょっとヤボ用が」言うて早めに上がらせてもらった。ほんまは大事な大事なデートで、全然ヤボ用ちゃうんやけど。ほんで約束のカラオケ店に向かう電車の中で、俺は物思いに耽っとった。
     俺はほんまに反省しとるし、またこうして会ってもらえることに、ほんまに感謝しとる。その感謝の印として花束でもプレゼントしたいくらいやけど、それはさすがに荷物になるし迷惑やと思う。
     せやから今日はアナログで、ラブレターを書いてきた。ほんでカラオケ店で落ち合った修二さんに、個室に入って直ぐに渡したんやけど。
    「え? 何これ、反省文?」
    「ちゃいますって。ラブレターですって」
     修二さんはコートを脱いでソファに座ってから、俺からのラブレターを開封して読み始めた。
    「やっぱり反省文やん」
    「ちゃいますって」
     そう言いながら俺も気になって、横から覗き込んでみたんやけど。思ったよりも言い訳がましい文章がつらつらと並んどって、許してもらおうって魂胆がにじみ出とって。全然感謝の気持ちが伝わってこんし、修二さんもこんなん読んでも全然嬉しないやろなって思ったら、急に恥ずかしなってきて。
    「やっぱり返してください」って取り返そうとしたんやけど、修二さんは「嫌や。もう貰ったから俺のモンや」って言うて頭の上でヒラヒラはためかせて。俺が手を伸ばすとサッ、サッてかわされて。仕舞いには着とる服の中に隠すから、手ぇ突っ込もうとしたら「あかん、えっち、変態」って言われて。
    「─っ」
     危うく変な気持ちになってまいそうで。あかん、反省、感謝、静まれ俺、って思て。雰囲気を変える為に早速一曲目を入力した。
    「え、何それ」
    「え、修二さんソーラン節って知らんのですか?」
    「知っとるけど何で今歌うん?」
    「盛り上がるやないですか。俺も歌い慣れとるから自信あるし」
    「盛り上が……? まぁ、盛り上がるか」
     それから俺はコートを脱いで腕まくりをすると、力強くソーラン節を歌い上げた。修二さんはパチパチと手拍子をしながら、「意外とソーラン節ってありやなぁ」って言うてくれて。かっこええとこ見せられたかなって思ったら、何やら照れてしもた。
     とりあえず掴みはOKやなって思いながら、俺は修二さんの隣に座った。修二さんはまだ歌う気はないみたいで、曲も入力せんとフードメニューをチェックしとった。
    「ノスケ、昼ご飯食べた? 何か注文する?」
    「来る途中でパン食べてきましたけど。ほなサイドメニューでも頼みましょうか」
    「いくつか頼んでシェアしよか。ポッキーとか」
    「ポッキー? 好きなんですか?」
    「ポッキーゲームでもしよか」
    「え?」
    「ポッキーゲームいうんはな、口と口の間にポッキーを─」
    「ポッキーゲームは知ってますて。せやけど別にポッキー食べながらやなくて、普通にキスしたらええやないですか」
    「ほな、する?」
     修二さんが唇をむにっと突き出したから、今日は出会っていきなりやなって思ったけど。断る理由なんて一つもないから、俺は身を乗り出して、修二さんにちゅっとキスをした。
    「好き、です」
    「俺も」
    「修二さん!」
     俺は修二さんの身体に、脇の方からぎゅうっと抱き付いた。修二さんの身体はあったかくてむにむにしとって、あー、生きとるなぁって感じがした。
    「ノスケ、この間は堪忍な」
    「そんな、悪いのは俺ですから」
    「ちょっと急やったしなぁ。まぁ素股で十分気持ちええし、ノスケの言う通り必ずしもセックスせんでもええ訳やし。これからは無理せずいこか」
     そう言われて俺は、普通やったら安心するところやと思うんやけど。十分とか無理とかいう言葉が引っ掛かって、何やら心がもやもやした。
    「あの、この間は上手く出来へんくてすみません。せやけど次は、もう少し上手く出来ると思うんで」
    「無理せんでええて。ちんちんさわられるのすら、嫌なんやろ」
    「それは、慣れたらいけると思うんで」
    「いつ慣れるん? もう1年近く付き合うてるんやけど」
    「1ヶ月─いや今日、今日から大丈夫です」
    「大丈夫ちゃうやろ」
    「俺、ちゃんとやれるんで」
    「アホらし。手段と目的がごっちゃになっとるわ」
     そう言うて修二さんは、サイドメニューを何品か注文し始めた。俺はそれを横目で見ながら、2週間前の修二さんの姿を思い出しとった。
     俺とずっと一緒におりたいって言うた修二さん。俺がまだ高校生やからって、セックスするのをためらっとった修二さん。1年以上セックスしてへんって、不満そうに言うとった修二さん。
     俺は勿論修二さんに幸せになってほしいし、修二さんが望むこと、出来る限りしてあげたい。それにこういうことを言うとあれやけど。修二さんが色んな女の人とそういうことをしてきたってこと、正直俺は今でも、面白くないと思っとる。せやけど、今は俺を大切にしてくれとるんならそれでええんやって、飲み込めるようにもなってきた。
     それやのに元カノさん達と違て、俺だけが修二さんのこと、セックスで満足させてあげられへんのかなって思ったら。俺も何やら悔しいし、修二さんかて物足りんくて、俺のこと嫌になるんちゃうかなって不安になるし。そんな状態で付き合い続けるとか嫌やし。セックスすることで幸せなお付き合いが出来るんやったら、それが一番ええし。
     素股で十分とか嘘やろ。修二さんが言うたんやん、セックスしたいって。修二さんの中に、セックスはええもんやって記憶があるんやろ? その記憶俺で塗り替えてほしいわ。
    「アホらしいとか言わんといてください。俺にとっては大事なことなんで」
    「はー……、分かった。ほなノスケが18になったらセックスしよ。18になったら俺がノスケに挿れたるわ。せやから18までは我慢せえや」
     修二さんに億劫そうにそう言われて、それはもう、一生俺には挿れられたくないって宣言で。俺はそこまでの失敗をしてしもたんかって、めちゃくちゃ応えたけども。そこは耐えんとほんまに手段と目的がごっちゃになってまうから、俺はぐっと飲み込んだ。
     ほんで抱かれるなら抱かれるで、少しでも早く抱いてもらえへんやろかって頭を切り替えて。俺は少しだけ修二さんににじり寄ると、なるべく寂しそうで、従順そうな声を出した。
    「1年以上、先の話ですか?」
    「16年我慢出来たんやから、1年くらい余裕やろ」
    「俺の話やなくて」
    「ほな、誰の話なん」
    「修二さんがぁ……」
    「俺が?」
    「心変わりとか、しません?」
    「心変わり?」
    「浮気、とか」
    「……」
    「何で黙るんですか」
    「あのなぁ」
     修二さんは俺側の腕をソファの背もたれに掛けると、俺の顔を見据えて言うた。
    「ほんまはこういうこと言いたなかったんやけど。こないだラブホでは平気やったけど、家に帰ってパンツ見たら血ぃ付いとったわ」
    「えっ」
     俺は全身の血液が無くなった気がした。
    「あの、病院とか行きました? 治療費出しますわ」
    「そういうこと、ちゃうんやって」
    「せやけど、俺が確実に出来ることって、それしかないやないですか」
     それこそ「大丈夫ですか」とか、「痛かったですか」とか、言うだけやったらいくらでも言えるけど。大丈夫やないから血ぃ出とるんやし、血ぃ出とるんなら痛かったに決まっとるし。
     確かにあの時、修二さんは辛そうにしとったのに、俺は1個も気遣えんくて。見栄とか興味とか優先して強引に挿れてしもて、自分のことしか考えられんくて。それやのに今更気遣う言葉を掛けたって上辺だけの言葉にしか聞こえへんし、白々しいし、虫が良すぎると思う。せやから男として修二さんに好かれたいとか言う以前に、せめて人として筋を通したい。
     せやけど今の俺の言動が、人として正しいんかどうかも正直分からんくなってきて。いつもやったら俺、こういう時にどないするんやったかなって思いを巡らせたんやけど。いつもやったら人にわざと怪我させることとかないし、デリケートな部分の状態を聞くこともないし。
     例え男として嫌われたとしても、人として誠実でありたいのに。どうしたらええか分からへんし、そうは言ってもやっぱり嫌われたなくて。俺は修二さんと一年近く付き合うてるのに、何を言えば喜んでもらえるとか、安心してもらえるとか、何も分からんくて、ほんまに情けなくて。
     しゃべればしゃべっただけ下手こきそうで、せやかて黙っとったら修二さんが遠くに行ってまいそうで。俺は修二さんの優しさに縋るしかなかった。
    「俺、いつもはもっと、ちゃんとやれとるんです」
    「……で?」
     俺は自分で言うのもなんやけど。お笑いでは少し危なっかしいところもあるけども、それ以外のことやったら同級生に負ける気せえへんし。大抵の年上の人には、そこそこ気に入られるし。気難しい先輩相手でも、ええこちゃんしとけば何とかなるし。
     何でも卒なくこなせるし、大きな失敗とかすることもないし。たまにアタリの強い人とかおっても、嫉妬でもされとるんかなって流してきたから。
     いざ修二さんみたいな強くてかっこええ人に、俺のことかっこええと思ってもらおうとか、嫌われたないとか、これまでで一番好きになってほしいとか。そう思ったとしても、いつもの俺では叶いそうになくて。頑張らなあかんのに、失敗ばかりで。
     願うことすら、俺には不相応なことなんやなって思い知らされて。どうやって許してもろたらええのかも分からんくて、空回りするばっかりで、修二さんが満足する返事も碌に言えへんかった。
    「他の人相手やったらそんなに失敗することもないし、上手くやれとるんです」
     修二さんを気遣わなあかんのに、出てくる言葉は言い訳ばっかりで。きっと修二さんに呆れられとるやろなって、この期に及んで自分のことしか考えられへんかった。
    「……さよか。血はそん時だけやし、すぐ治ったから大丈夫やわ」
    「そんなら、よかったですけど」
    「俺も悪かったわ。俺からやりたい言い出して、折角ノスケもその気になってくれたのにな」
     修二さんが俺の肩を優しく抱いてくれて、俺はえらいほっとしたんやけど。修二さんの優しい言葉が何やら余所余所しく感じられて、心のもやもやは全然晴れへんかった。
    「修二さんは、悪ないですから」
    「ノスケこそ悪ないて。悪いのは俺や」
    「修二さんって、そういうとこありません?」
    「何がや」
    「ちゃんと話し合えてへんのに、謝って終わらそうとするとこ」
    「……はぁ?」
     俺の肩にある修二さんの手がピクッと動いて、俺は少しドキリとした。
    「ちゃんと話せへん、俺が悪いんですけど」
    「そんなん言われたら俺、二度と謝らんけど」
    「えっ、スネとるんですか?」
    「スネとる」
     そう言うて修二さんは、すごい勢いで曲を追加していって、それ全部俺に歌えって言うた。全部最近のラブソングやったんやけど、サビは聞いたことあるなぐらいの曲ばっかりで、俺は全然歌えへんくて。結局殆んど全部修二さんが歌った。
     修二さんはスネながらも甘い歌詞の歌をええ声で歌ってくれて、俺はこんな状況でも胸がときめいたんやけど。俺って恋人がおるのにラブソングの一つも歌えんのやなって、自分で自分が嫌になるばかりやった。
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