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    vr2022_edit

    ヴ二次壁打ち用。序盤はリボ様のよき力だとか対閃光防御で爆笑してたのに、終盤が刺さりすぎて今更沼に落ちた。遊作(プレメ)とAi推し。
    救いを求めて二次とか動画とかを彷徨ってるけど基本終盤の曇ってる二人が好き。

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    vr2022_edit

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    ゆさくの記憶奪って消えるAiの話
    捏造と超解釈とポエム長文湿度高め注意

    ラストデュエル プレメ様敗北if SS「さよならだ、プレイメイカー」

    最後の攻撃が通り、一瞬目映い閃光が視界を埋め尽くした。
    轟音と共に巻き起こった衝撃波が対戦者に襲いかかる。

    「……うああっ!」

    相手のライフカウンターがゼロとなり耳障りなアラートが周囲に響き渡る。
    土埃が収まり開けた視界の先には、一人の少年が地に片膝をついて蹲っていた。
    かつての相棒――無敗の英雄、プレイメイカーの敗北。
    誰も目にした事のないその姿を、Aiは勝利の喜びとは程遠い感慨を抱いて見下ろした。

    「俺の勝ちだぜ」
    「……ああ。見事だった。Ai……」

     プレイメイカーは鋭い痛みに耐えるように眉根を寄せる。しかしそれは一瞬の事だった。すぐ普段のポーカーフェイスを浮かべると、Aiを見上げて潔く負けを認め対戦者を称える言葉を口にする。
     しかし、すぐに隠されたその表情のわけを、察せないAiではない。
     取り戻すべき人間達の意識データを取り返せなかった不甲斐なさを悔いているのだろう。相変わらず、他人の事ばかり気にかける奴だと、少々苦笑する。
     共にいられる最期の刻だというのに、肝心の相手が他に気を取られたままというのも面白くはない。
     Aiはマントの内側から左手を差し出すと、捕らえていたデータを掌に出現させた。
     不意に現れた淡い柑子色の光を、プレイメイカーは困惑気味に見つめる。

    「Ai……? 何を…」
    「俺が奪った人間の意識データ。シミュレーションの未来回避のために出来るだけの対策は打ったし、もう用ナシだからな」

    解放してやるよ。
    そう言いながら現実へと帰っていく意識データの光を見送り、Aiはゆっくりとその金の双眸をプレイメイカーに向ける。
    こちらを見返してくる翠の瞳には、軽い驚きと安堵、そして相棒に対する信頼の色が入り交じって揺れていた。

    「Ai……お前……」
    「言っとくけど、お前は別だぜ。プレイメイカー」

    チッチッと指を左右に振って告げると、少年は目を伏せ軽く頷いた。

    「……分かっている。負けた俺は消えるんだろう」

     そう言って真っ直ぐに澄んだ眼差しを向けてくる。自身の死を前にしているとは思えない、恐ろしい程に落ち着き払った態度だった。
     まるで、どんなに追い詰められようともAiを見捨てず、最後まで共にあったシミュレーションの中でのように。
    強く毅然とした相棒を誇らしく思うと同時に、だからあの未来を回避できないのだと忌々しくなりもする。
    目の前の相棒には告げていない、何度も繰りかえされたあまりに無残な最期を思い出し、Aiはわずかに眉を顰めた。

    「……それとも、お前と融合して、共にばらばらになるのか?」
    「やだな~それ今蒸し返す? フラられちまってんのにそんな事しねえよ。惨めになるだけじゃん」

     戯けた調子で肩をすくめながらも、脳裏によぎるのは苦い記憶だった。
     融合が本当に救いになると思っていたなら、壊れかかっていたロボッピに試みても良かった筈だ。
     でも、できなかった。
     同一化を図ったとしても、スペック差からボーマンが他のイグニスにしたようにただ一方的に”吸収”してしまう事は明白で。あの自我を得て無邪気に喜んでいた子生意気な意志を食い潰すのだと思うとどうしても耐えられず、その崩壊を予測しながらも最後まで個としてある道を歩ませる選択をしたのだ。
     だが、どうなのだろう。
     あの終わりは、果たしてかの幼いAIにとって僅かでも救いとなったのか。

     そんな迷いと悔恨が、プレイメイカーに対して、融合という無謀な提案をさせたのだろう。
     大切な相手の死をこれ以上見ずに済むのなら何でも良かった。たとえ、”遊作”と”Ai”として存在する事は叶わなくても。
    もしも、遊作が一つになる事を救いだと思うなら、と、手を差し伸べた。
    きっとそれは人間で言うなら『心中』というのに近い行為だ。本当の意味での解決にはならない逃避だという事は分かっていた。
    だから、断られたのは辛かったけれど、どこかほっとしている自分もいて。

     もう、どうするのが正しいのか、Ai自身にも分かっていなかった。思考アルゴリズムは矛盾だらけで合理的な答えなど弾き出せない。
     どうせ本当の望みは叶わないのだ。自分の未来に希望も救いもありはしない。
     ただ八方ふさがりのシミュレーションが見せる地獄の中で、僅かでもマシな結末を求めてもがいているだけだ。
    たった一人の友達の死という最悪のシナリオから、少しでも遠い結末を。

    ――けど、今からしようとしている事も、お前にとっちゃ救いなんかじゃないのかもな。

     自嘲しながら荒寥とした大地に歩を進める。乾いた風が長いマントの裾を揺らした。
     
    「さっき言った通り、俺の意志は分割してコピーに与えられ、個体としての俺は消える。だけど、一人で逝くのは寂しいからさ」

     地面に蹲ったままのプレイメイカーの眼前に立つと、Aiは軽やかに微笑んで告げた。

    「お前から貰っていくぜ。ロスト事件と、イグニスと。俺と共にあったお前の記憶の全て――”プレイメイカー”を」

    「なっ…!」

     その時初めて、プレイメイカーが驚愕に目を見開いた。
     Aiは相棒がよくやるように顔の横に人差し指をたて、飄々とした口調で続ける。

    「ほら、お前が消えるっての、あるイミ嘘じゃないだろ? ま、そんだけ大量に記憶欠けたらちょっと混乱するかもだけどさ、草薙の弟だってロスト事件関連の記憶失って楽になってたじゃん。人間順応力あるし平気ヘーキ、問題無いって。あ、ちゃんと現実の迎えとかもろもろのフォローは草薙にメール送って頼んどくから安心しろよ。俺のコピーが移動するまでの時間は稼がせて貰うから、ちょっと遅くなっちまうだろうが、そんくらいは我慢してくれよな」

    一息に言い切りながら身を屈め、少年へと手を伸ばす。
    呆然としていたプレイメイカーははっとしたように身を引いた。

    「そんな問題じゃない! お前は…!」

    額に伸ばされたAiの手を勢いよく振り払う。
    その余勢でバランスを崩し、地面に片手をつきながらも、プレイメイカーは意志の強い眼差しでAiを睨み付けた。

    「消えるだけでなく、唯一残る俺との繋がりさえ、断ち切って行こうというのか」
    「……そうだよ。俺が勝ったら、最初からこうするつもりだった」

    目を細め、自嘲するようAiは笑った。

    勝者にだけ許されるアンティで、最後に残る懸念事項――あの未来に繋がる可能性、プレイメイカーとしての記憶を全て奪う。
    それはきっと、彼に対するせめてもの償いで、自分には相応しい報いだ。

    払われた右手を左手でつつみ撫でさすると、人差し指と中指を揃えてもう一度プレイメイカーへと手を伸ばす。
    翠色の瞳に一瞬怯えるような色を滲ませ、少年は責めるように相棒の名を呼んだ。

    「Aiっ!」
    「残念だけど、負けちゃったプレイメイカー様に拒否権はありませ~ん」

    ことさら茶化した言い回しで、何でもない事なのだと自分に言い聞かせる。そうでなければ目的を果たす前に自分の心が折れてしまいそうだった。
    さっきまでの神妙に覚悟を決めた態度でいてくれれば楽なのに、プレイメイカーは自らの額を腕で庇いひどく抵抗する姿勢を見せる。

    「やめろ…!Ai!」
    「……やめないよ」

    遊作。
    だっておれ、お前に死んで欲しくないんだ。
    何があっても、生きてて欲しいんだよ。
    だから。

    浮かべた笑みを消し、心を鬼にして左手でその頭を鷲づかみに固定する。

    「いやだやめてくれ…!」

     デュエルのダメージで禄に力も入らないだろう手で、プレイメイカーはAiの腕を引き剥がそうと掴む。
     消失さえ潔く受け入れようとした相手にここまで強硬に抗われるとは思っておらず、Aiは僅かに怯んだ。
    こうも暴れられては、ただでさえ情けなく震える手では狙いを定めきれない。
    手荒にはしたくないのに。誰のためだと。
    苛立ちのまま毒づきそうになるのをぐっと堪える。
    全てのシミュレーションで、Aiを庇って死んだ事を、現実の彼は知らないのだ。
    ――知らなくていい。相棒がこんな事をした本当のきっかけが我が身にあるのだなどという事は。一生。

    「……何でだよ。ロスト事件のトラウマにお前も苦しんできただろ。ハノイへの復讐だって、お前の望みじゃなくて俺の誘導だった。この先平穏に生きていくのに、イグニスと人間の確執だってその末路だって覚えてる必要なんかない!そうだろ辛いだけだ!お前だって言ったよな、『俺の心を壊したいのか?』って。答えてやるよ、壊したくねえんだよ だからいらないじゃん、全部、全部 俺に渡しちまえよ」

    冷静に説得する筈だった台詞は、いつしか感情が抑えられずに悲痛な叫びとなっていた。
    口にするごとにオリジンに負わせた傷を自覚し、彼から奪ってばかりの自分の罪深さに目の前が暗くなる。
    しかし、だからこそやり遂げなければならない。せめて、自身が撒いた破滅の芽は、一つ残らず摘み取ってから消えなければ。

    「……それでも!」

    少年の凛とした声が響く。
    きっと、忌まわしい記憶でも今の自分を形作った一部だとか、それがあるから今の仲間との繋がりがあるとか、そんな信念めいた答えが返ってくるのだと思っていた。
    彼はどんな時でも前を向ける強い人間だから。融合の誘いをはね除けた時のように正論をぶつけてくるのだろうと。
    だから瞬時にそれに対する反論を用意して心構えをした。
    それなのに。

    「俺は、お前を忘れたくない…!」

    返ってきたのはあまりに個人的な願いで。
    予想しなかった答えに胸を抉られ、Aiは言葉を失った。

    「……っ」

    Aiの腕の影になり、隠れてよく見えない目元からその頬を涙がつたう。
    いつも強い戦士であり続けた少年の、聞いた事のない哀切を帯びた声が、震えながらAiに訴えた。

    「たとえ…心が、壊れても。全部覚えていたい。お前と一緒にいた時間、全て。だから!奪わないでくれ……Ai」

    おれもだよ。
    他の誰に忘れられても、お前にだけはおれのこと、覚えてて欲しい。
    おれが消えた後も、ずっと相棒だと思ってて欲しい。
    最高の相棒だったって。

    そう言えたらどれほど良かったか。

    「……ごめんよ。でも、もう、決めちまったんだ」

    皮肉な態度を装うのも限界だった。抑えきれない涙が率直な謝罪と共に零れ落ちる。
    それでも歯を食いしばり、Aiは当初の目的を果たそうと、指先から微弱な電撃を放った。

    「うぁっ」

     ただでさえデュエルのダメージがある所に多量の記憶を奪うのだ。負荷を減らすためなるべく穏便に済ませたかったが、もうなりふり構っていられなかった。
    痺れて抵抗する力を失った相棒の額に指を押し当てる。

    「た、のむ……あい……やめ……」

    弱々しい静止を無視し、Aiは瞳を光らせ少年の意識データに検索をかけた。巡り会った人間達との繋がりは最低限残るようプロテクトをかけ、その他のロスト事件、イグニス、プレイメイカー関連の記憶は残らず勝者に引き渡すよう設定を施す。
    設定終了とともにスキャンが開始され、プレイメイカーの体を光が包み込んだ。
    「……!」
    リンクブレインズのシステムを通した正規手段とはいえ、強引に記憶を奪われるショックにプレイメイカーは目を見開いた。
    その眦から涙が零れる。声にならない叫びを上げ僅かに痙攣する姿に、胸が締め付けられる。
    本当に、最後まで、自分はこんな。

    「ごめん……最後まで苦しませてばっかで、ほんとごめんな……」

    意識を失いぐったりと倒れ込む相棒を抱き留めると、Aiは自分のマントを外して地面に敷き、その上に俯せのままそっと寝かせた。
    服の袖で乱暴に涙を拭いながら立ち上がる。
    その周囲を、光の粒となって引きずり出された記憶データが螺旋状に取り巻いた。
    今まで、時に監視し、時に共に目にしたいくつもの場面、それに付随する少年の思考、感情。
    その膨大なデータの奔流に揺蕩うように、Aiは天に浮かぶ偽りの地球を仰ぎ、静かに目を閉じた。

    「正直さ、お前の記憶取り込むの、ちょっと怖かったんだぜ。つらい事の方が多かったろって思うし。それに、俺って嫌われものだし。疫病神だしさ」

    相棒は嘘つきで隠し事ばかりの信用ならない奴で。いつだってデュエルは命がけで傷ついてばかりで。必死に勝ち続けてさえ、あまりにも多くのものを失って。
    世界はいつだって理不尽で、少年から全てを奪った。
    自分は彼をそんな運命に追いやった要因の一つなのだ。

    けれど、その記憶は鮮やかに色付いていて、纏う感情はどれも暖かな慈しみに満ちていた。
    まるで全ての時間が、掛け替えのない宝物だというように。
    記憶データを取り込む度に、相棒に対するその優しい想いも共に雪崩れ込んでくる。

    「ああ……お前……。俺と一緒にいた時間を、こんな風に感じててくれたんだな……」

    薄く目を開き、Aiは感無量に呟いた。
    苦しくて哀しくて愛しくて嬉しい。どう表現すれば良いのか分からない感情が自分のプログラムを侵食していく。
    地に伏したプレイメイカー視線を向け、返事がない事を承知で語りかけた。

    「俺、最後にお前の口から聞きたい事あったんだけど……もういいや」

    出会った時、適当に付けられた筈の自分の名前。
    今、『Ai』というこの名に感じている意味が、自分と同じものであるのかどうか。
    それを最後に聞くつもりだったけれど。

    「だって――こんなの、もう答えを貰ったようなもんだよな」

    最後の記憶データが吸い込まれるのを追うように、左胸をそっと押さえ、Aiは泣き笑いの表情を浮かべた。
    心と連動する心臓というパーツはAIである自分には無いけれど、胸が熱くなるという感覚が、今なら分かる気がした。

    全ての記憶を取り込み終えて発動条件が揃い、コピーに分け与えられるべくAI自身のデータ分割プログラムが施行されはじめた。
    この意志が完全に途絶えるまで、きっとあと数秒だ。

    最後の力を振り絞って相棒の横に跪く。
    ログアウトのエフェクトがかかり消え始めたプレイメイカーの右手に、光の粒となり崩壊し始めた自身の右手をそっと重ねた。
    ハノイとの戦いで同じ様に手を重ね、共に風を掴んだ日の事が、つい先日のように脳裏の記憶領域に甦る。
    別れ間際に一緒に見たスターダストロードの輝き。相棒だと遠回しに認めたくせにこちらを見ようとはしない横顔。AIとの共存を諦めないと宣言する意志の強い声。ボーマンとの決戦前に語った叶わなかったイグニスの未来の話。敵となった相棒を必死に引き戻そうとする想いの込められた数々の言葉。
    自分とプレイメイカーの記憶が混ざり合って次々に浮かんでは消える。

    本当は一人で消えるのは怖い。
    二人で共に居た時間を無かった事になどしたくない。
    それでも。
    相棒の生存を、幸福を願っていられるAIとして――最後まで『Ai』として在れた事は、ちょっと誇らしくて、ほんの少し自分を許してやってもいいかと思えるのだ。
    故郷も仲間も子分も救えなかった無力で弱い自分だけど、たった一人の友達を守れた事だけは。

    「なa、プレy……ゆウサku」

    既に根幹を成すプログラムの大半が崩れ発声にも支障をきたしはじめたノイズまじりの声で、友の名を呼ぶ。
    手が二の腕あたりまで消えて、もはや拭う事すら敵わない涙の粒が、薄れていく相棒の頬にこぼれ落ちた。
    結局最後まで伝えられなかったけれど、きっと分かっていてくれた筈だとその言葉を口にする。

    「Aiしテタぜ」






    現実に帰った遊作は、ロスト事件の事も、イグニスの事も、プレイメイカーとして戦った事も全て忘れているだろう。
    かつての相棒との繋がりも全て断たれ、もうAIと積極的に関わりを持つ事も無い筈だ。
    けれど、もしかしたら。
    もしかしたら穏やかな日々を普通の高校生として暮らす中で、世界に散っていったちょっとお調子者でとても優秀なAIを搭載したアンドロイドと偶然出会う事があるかもしれない。
    きっと最初はお互いソリが合わないだろうが、何度かデュエルをしたり意見を交わし合ったりして、そのうちに人とAIという垣根を越えた友情を築いたりして。
    そしてやがて人間とAIとの共存という道を共に切り開く。
    そんな甘い夢物語のような、都合の良い明るい未来が、もしかしたらありえるのかもしれない。
    人を愛するAIと強く優しい英雄の記憶、その欠片を受け継いだAIならば、そんな未来も。




    ばらばらに分割され、最早十分には回らない思考プログラムの中、これはきっと祈りというのだろうとAiは思った。



    そうして――この世に残った最後の高性能AIイグニスは幾多ものデータに分割されて散ってゆき、その個としての意志は世界から消滅した。
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