さにわ「シリアス時空にいたはずなのに突如としてラブコメ時空に放り込まれたかもしれない」・まんばとさにわとちょぎくん
※さにわ:♀
普段はまんばちゃん、不在の時は乱が近侍を務める。
しかし今日は二振ともいないのでちょぎが近侍です。
ついつい、ちょぎの顔をじっと見てしまうさにわ
「何かな? 以下略」
「あ、いや、ごめん。」
「別に構わないよ。持てるものこそ以下略」
「それに君は見ていても顔を隠さないし……」
まんばちゃんは顔を布で隠さなくなってもじっと見つめると「綺麗とか言うな!」と全力でそっぽ向いてしまう。それはそれで可愛げがある。
ふぅんとちょぎくんは微妙な顔。怒ってるようにも面白がってるようにも。さにわに
「それは……俺の顔をみて、よりにも寄ってどこのどいつのことを考えていたのかな?」
「あああごめんごめんなさい怒らないでだから顔を近付けないでぇぇ」
「見たいんだろ? 好きなだけ俺を見れば良いさ。どこかの誰かさんのことを思い浮かべる隙もないくらい見れば良い」
「知ってるくせに……僕が、君の……に弱いって……」
「さぁ、何のことかな。良く聞こえなかった、一体何に弱いって?」
「君の……その……」
「……顔が真っ赤だね」
「揶揄うのはやめてくれ。怒られたなら謝るしお詫びに何でもするから」
「主が俺にしたことに比べたら可愛いものじゃないか? それに……」
「良くないな、主。そう易々と『何でもする』だなんで、俺たち相手に口にするのは。軽率だ」
「俺の顔を見たいならいくらでも見れば良い。主相手ならいくらでも構わない。ただし、そのときその脳裏に偽物くんを少しでも思い浮かべるのは主と言えど許さない」
「……ごめん、なさい」
「分かってくれれば良い。……さて、それでお詫びだけど……何でもしてくれるって?」
「うん……はい……」
「二言はない? 本当に?」
「……二言はない! 主だからって長義を傷付けたのであれば相応のことをすべきだと僕だって思う!」
「よろしい」
そんなこんなで、まんばちゃんが帰ってきました。報告のためにさにわのところに来たようです。
さにわとちょぎの声が聞こえる。
『……なんで!』
『何でもする、二言はない。そう言ったのは主だ』
『だけどそんなこと……』
『恥ずかしがることかい? 簡単だろ、ほら……』
『あ、待って……そんなぁ……』
話の流れが何だか不穏。
「入るぞ! 一体何を――」
すぱんっと襖を開けると
なんとさにわの身長に合わせて屈んだ長義と顔を真っ赤っかにしながらその頬に懸命にちゅーをするさにわの姿が!
「――――」
「おや、偽物くん。良いところに帰ってきたね」
「えっ、あっ! 国広!? お、おお、おかえり!」
にやりと笑う長義とあわてふためくさにわ、そしてぷるぷる国広。
「…………おのれ、本歌ッ!! よくも!!」
「よくも? なんだ? 何をそんなに怒る。お前の大事な主が俺の頬に口付けしたことがそんなに羨ましいか?」
ご機嫌に余裕ぶるちょぎくん。
「羨ましい! ……かどうかはいまは関係ない!」
「近侍を任せたら主を寝取ろうとは随分と豪胆だな!」
「寝取るとは人聞きが悪い。むしろ盗み聞きをしていたそちらはどうなんだ」
「ねとる? ねと-る? ね-とる?」
くびをかしげるさにわ。まだお子さまなのでそういうことはあまり知りません。
盛り上がっちゃってる伯仲を両サイドにさにわはじっと二振の顔を交互にみます。
あいにく、いまはどちらも互いへ意識が向いてるのでさにわの視線には気が付きません。
(やっぱりなぁ)
かたや苦言を呈し、厳しい表情。
かたや煽りつつも優越的に、余裕の表情。
二振の横顔はそれぞれ浮かべる表情は異なるものの、やはり造形の美しさは近いものがあります。
じっと見つめて、ずっと見つめていたい。
どうして? 何故なら美しいから。美しいものに惹かれてしまうから。
それ以上の答えを、いまのさにわは知りません。
「国広」
国広を怒らせるつもりはなかったんだよ。
長義を傷付けてしまったからお詫びで口付けをしたんだよ、頬に。
国広も口付けをしたら怒らない? 許してくれる?
再びぷるぷる国広。
「ああ」
極めたから耐えられた、極めてなかったから脱走してた。
そんなことを思いつつ国広くんはおもむろにほっぺちゅーをげっとするのでした。