気が付くと、あなたは森の中で佇んでいた。
辺りには、かすかな風の音と、遠くで鳴く獣の声だけが響いている。薄寒い空気が肌を撫で、あなたは思わず身を震わせた。
微かに立ち込める霧の中、目を凝らしてみると、木々の間から差し込む月明かりが道をぼんやりと照らしていた。車一台通るのがやっとの細い道だ。じっと湿った地面は所々ぬかるんでいて、タイヤの跡ででこぼこしている。
あなたは、その道に向かって迷いのない一歩を踏み出す。この先に何があるのか知っているからだ。夢の中で、もう何度も歩いた道だった。
あなたは今、夢をみている。
その一本道をしばらく進むと、少し開けた場所に建物が現れる。年季が入っているが、洋風で薄ぼけた象牙色の大きな屋敷だ。
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