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    soryu17setsuna

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    soryu17setsuna

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    ただの伏乙妄想

    お題【上の空】次の授業へ向かう伏黒を背後から呼び止める声。振り向くと2年の真希、パンダ先輩。不良に絡まれるように両脇に回られこれはめんどくさい事情だと一瞬で察知する伏黒。
    要件を聞くと最近乙骨先輩がずっと上の空らしい。授業中も自主練中も気づいたらボケーっと空ばかり見上げているそうだ。

    「理由を聞いても空が綺麗だと思って。の一点ばり」

    めんどくさそうに答える真希先輩。

    「日下部も不吉だって怯えてたぞー。俺たちには言えない事情があるんじゃないか?恵にうってつけだろ」

    パンダ先輩が片手で輪をつくり、もう片方の指を輪に通す仕草。俺と先輩がそういう関係だとはとっくにバレてるが人目につくような場所で露骨にそんなポーズされるとイラつきを隠せない。顔に出ていたのかニヤニヤとしてくる先輩にやめてくださいと制止する。

    「最後に俺と会った時の先輩はいつも通りでしたけど…。今度聞いてみます」

    これ以上めんどくさい2人と絡みたくない伏黒はさっさと2人から離れようとするが逃すまいと肩を組む真希。

    「あ?誰が今度つった今行ってこいよ」

    このままじゃ私らの気が狂うとため息つく真希とうんうんと頷くパンダ。

    「いや、これから授業…」

    「あぁ!?どうせバカ目隠しの授業だろそんなんちょっとくらい遅れたって平気だ」

    「なんなら俺が代わりに出といてやるぞ。そら早く憂太のとこ行ってこーい」

    パンダに背中を思いっきり押され転びそうになる伏黒。憂太は私たちの教室にいるからな、終わったらグラウンド来いって言っとけ!と背後から真希の声。半ば強制的に乙骨の元へ向かわされる伏黒。

    先輩が上の空ねえ…

    あの真面目な先輩が同級生の前でもぼーっとしてる姿が想像できない。ここ1週間はお互い授業や任務で忙しく会えてないから先輩の状況は知らなかった。なら体調不良?あの人我慢するタイプだしな、少し不安になってきた伏黒は足早に2年の教室へ向かう。
    教室に入ると4つしかない机の窓際の席に乙骨が、机を跨いだ前に狗巻が座っていた。心配そうに乙骨を見ていた狗巻は伏黒を発見すると嬉しそうに近づいて伏黒を自分が座っていた席に連れていくと着席させ、しゃけ!とグッドサインを出して教室を去って行った。

    「いや、あの…」

    何の事情も知らないのにあとは任せた!と言わんばかりにそそくさと去ってしまった狗巻先輩。去っていく方向に手を伸ばすも届くはずはなく、ため息をつくと乙骨へと視線を戻す。

    のぼせているかのように頬を染めていて眠そうな瞳。ボケーっと空を見上げている姿に心を奪われる。そばに俺がいるのに上の空なのは初めてだ。だが机に肘をついて空を眺めるその姿は儚くも美しい。こんな綺麗な先輩、初めて見たかもしれない。

    「乙骨先輩?大丈夫ですか」

    「あ、伏黒くんだあ。どうしたの?」

    「どうしたのじゃないですよ!最近様子がおかしいって皆言ってますよ。ボケーっとしててずっと上の空だって」 

    「ええ?そうかな?いつも通りだけど…」

    いつもよりワンテンポ遅い動作に話す言葉。

    「どう見ても違います。先輩、今何考えてました?」

    「え?うーんと、空が綺麗だなって」

    「他には?」

    「他に?うーん…伏黒くんと一緒どこかへ行きたいなあ…」

    その言葉を聞いた途端伏黒はバンと机を叩き勢いよく立ち上がる。乙骨の手を握り引っ張り立たせるとそのまま引っ張りどこかへ連れていく。

    行き着いた先は男子トイレ。1番奥の個室まで連れて行くと乙骨を先に入れ、伏黒も入り扉を閉め鍵をかける。電気もつけられず薄暗い個室。1人分の便器と1人分のスペースで仕切られた狭い空間に2人の吐息が籠る。睨みつけるように鋭い眼差しで乙骨を見つめる。伏黒くん…?と戸惑った声の乙骨が不安そうにしている。少し顎を下げ上目遣いの瞳が誘うように見つめてくる。

    伏黒は乙骨の顎を掴むと薄く開いた唇に口づける。一瞬驚いた乙骨の声が漏れる。その甘い音に誘われて噛み付くようなキスを交わす。何度も吸いつくように纏わりつく唇に乙骨の熱も増していく。腕を伏黒の首に絡み付かせ、もっと欲しいとおねだりの合図を送ると伏黒の舌が口内に侵入してくる。それを受け入れるように大きく唇を開くと無遠慮に侵入する伏黒の舌。自分以外のねっとりとした物質に口内を侵されていく。その柔らかい感触がたまらなくて乙骨も舌を絡ませ熱を大きくする。乙骨が舌を出すとすかさずヂュッと吸い込む伏黒。ビチャビチャといやらしい粘液の混ざる音と互いの熱い吐息だけが響く空間。

    しばらくキスを堪能した伏黒は強引に乙骨を押し剥がす。まだ物足りなさそうな互いの舌を透明の糸が結ぶがすぐに切れてしまう。深いキスに夢中で呼吸の疎かになっていた2人は無言で呼吸を整える。興奮のせいなのか、呼吸の乱れのせいか、それとも互いの熱を浴びたせいなのか、2人の顔は薄暗くても分かるくらい赤く高揚している。

    「先輩、これで満足しましたか?」

    先に呼吸を整えた伏黒が問う。

    「うん…でももっと欲しい…」

    蕩けた顔で伏黒を見つめる乙骨が再び腕を絡めようとしてくるがその両手首を掴むと壁まで押し固定する。

    「だめですよ。ここは学校です。ちゃんと今夜まで我慢できたら続きをしてあげます。それまではいつも通りでいてください」

    わかったと少し悲しそうに俯く乙骨に自分の欲望が疼く。だが先輩に我慢を強いる以上、俺も我慢せねば。

    「先輩がここまで俺のことを求めてくれてるのを知って安心しました。本当はこのまま逃したくないくらい先輩のことを愛してるんですよ。でもここは公共の場です。慎まねばならない…でもそんな顔されたらいつ俺の欲が爆発するかわかりません。俺の本性は先輩だけが知っててほしい。他の誰かがいる時にそんな可愛い顔をするの辞めてください」

    「うん、わかった。ごめんね。伏黒くんに迷惑かけて…なんだか最近僕変だなって気づいてたんだ。伏黒くんが好きで伏黒くんのことばかり考えてしまう。他のことに集中できなくなるくらい。だから現実逃避したくてずっと空ばかり見てたんだ。本当はもっと伏黒くんに触れていたいし触れられていたいんだ。でも伏黒くんも同じ気持ちで我慢してるんだってわかったから僕も我慢するね」

    いつもと変わらない笑顔に戻った乙骨に安堵する伏黒。両手の拘束を解くと優しく抱きしめる。乙骨の手の感触が伏黒の背に伝わる。伏黒よりも少しだけ幅の広い乙骨の背中。自分に合わせてくれているのか少しだけ丸まった背骨を撫でるとくすぐったいのか乙骨は艶めかしい声を上げて背中を反ってしまう。

    「我慢って言ったくせに…」

    頬を染め嬉しそうに話す乙骨の唇に伏黒はもう一度口づけを交わすとドアの鍵を開け扉を開く。

    「先に行ってください。先輩達グラウンドいるって言ってました」

    乙骨が外に出られるよう端により扉を押さえる。

    「ありがとう。じゃあまた」

    今夜ね。

    そう言ってトイレを後にする乙骨を見守ると深いため息を吐き壁にもたれかかる伏黒。

    危なかった…先輩のあんなに蕩けた顔をまさか学校でも見せつけられるとは思わなかった。あの顔を見るとどうも理性が吹っ飛んで抑えられなくなる。しかもあんな顔を同級生の前で堂々としていただなんて、恋人である俺だけが見れる特権だと思っていたのに。嫉妬で気が狂いそうだった。だがこの場はなんとか凌ぐことができた。でも今夜はきっと────

    駄目だ。まだ昼だし授業に戻らなければならない。伏黒は深呼吸して乱れた心を取り戻すと急ぎ足で教室に戻っていく。






    「結局、憂太のはアレはなんだったんだ?」

    後日、あの事件以来に再開したパンダが伏黒に聞く。

    「さあ、俺にもよくわかりません。だけどひとつ心当たりはあります」

    「心当たり?」

    あの夜、約束をちゃんと守った乙骨と激しく求めあって満足した乙骨が眠った後で伏黒は先輩がこうなった原因をネットで調べていた。すると似たような事例にヒットする。

    「こいわずらい?」

    その言葉を聞いたパンダが復唱する。

    「はい、症状としては仕事などが手につかなくなるほどの集中力の低下と、食欲や睡眠欲の低下がよくあげられるそうです。原因は一時的な脳内物資、ホルモンなどの変化によるものらしいです」

    「ほーう?つまり恵とのことを考えずきて何も出来なくなるってことか。お前らやりすぎじゃないのか〜?」

    パンダがにやにやしながらお得意のあのポーズをしようとしたので即座に手を掴み阻止する伏黒。

    「してません。でももう少し乙骨先輩とも向き合ってみようと思います」

    「というと?」

    「恋愛事以外に熱中させることですかね。乙骨先輩の趣味をたくさん作って頭を恋愛から別の興味に逸らせます。例えば一緒に料理をするとか、買い物に行ったりとか。1人の時間を減らせば考える時間なくなりますしね」

    「なるほどなあ。憂太もあんまり顔には出さないが恵のこと大好きだもんなあ」

    伏黒の顔がブワッと赤くなる。もちろん自分達は相思相愛だとわかっている。だが、他人に言われると気恥ずかしくてたまらない。

    「なんだあ〜?今更恥ずかしがることもないだろう。まあ、また憂太がボケっとしてたら俺も喝入れといてやるよ」

    お幸せになあ。とパンダ赤くなった耳元で囁くと立ち去っていく。

    言われなくとも俺達は幸せだ。だがその余裕が乙骨先輩をああさせてしまったのだろうか。ボリボリと頭を掻きむしりながら伏黒は思う。
    ただでさえ特級で忙しい身の乙骨先輩とはなかなか予定が合わず会えない時間も長い。自分のことを思ってくれるのはありがたいがそれが命取りになることもあるかもしれない。俺もきっと目の前の乙骨先輩に夢中になりすぎて恋愛の仕方に無知すぎるのだろう。次会った時はもっと普通の日常を過ごしてみようか。

    気づいたら乙骨先輩のことばかり考えているのは俺も同じじゃないか。
    早く乙骨先輩に会いたい。そう願って空を見上げてる伏黒だった。
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