今日は早起きした伏黒。授業の始まる1時間以上前に学校へ行きまだクラスメイトのいない静かな教室で予習がてら教科書を読む。しばらくするとスマホの着信が鳴り響き煩くて顔を歪める。
画面には禪院真希先輩の文字。電話に出ると挨拶も早々、朝練するって言ったのに憂太が来ない。起こしてこいとのご指示で。また寮に戻るのがめんどくさい伏黒は渋るが、お前の合鍵使って起こせとのご命令が。
渋々承諾すると一度部屋に戻り乙骨の部屋の鍵を握るとすぐに乙骨の部屋へ向かう。一応ノックをするが返事はないため鍵を使って開けると部屋の奥のベッドでスヤスヤと眠る乙骨先輩が。
堂々と部屋に侵入しても起きる気配のない先輩の危機意識大丈夫か?と思いつつも自分だから安心しきって眠っているのだろうかと少し嬉しくなる。
ベッド脇に跪き肘をついて乙骨の寝顔を見つめる。一定のリズムで上下する体、まだ意識は夢の中なのだろう。無抵抗の唇が薄く開いている。その唇に誘惑されるかのように指を少しだけ口に突っ込む伏黒。入れた瞬間不快な顔をしたが、吐き出すかと思えばムグムグと唇を動かして感触を味わっている。まるで指をしゃぶられているような感覚になにかが掻き立てられるように昂ぶる気持ち。
興奮を抑えられず下腹部に手を伸ばした時、口の違和感に気づいたのか乙骨が目を覚ます。伏黒は残念と思いながら伸ばした手は引っ込める。
「…おはよう伏黒くん。…あれ、ここ君の部屋だっけ」
寝ぼけてうっすらと開いた瞳はまたすぐにでも寝そうなくらい眠そうにしている。
「先輩の部屋ですよ。…先輩、今日何か忘れてませんか?」
「?なんだっけ?」
「他の先輩達、グラウンドで待ってるみたいですよ」
「え…?あ、あぁ!!!そういえば朝練するっていってた!!!今何時っ?!」
ようやく思い出した乙骨は側の時計を見ると目を丸々として飛び起きる。慌てた様子でバタバタと洗面台に走る乙骨を眺めながらため息をはく伏黒。
たまにやらかすんだよな先輩。疲れ取れてないのだろうか。
着替えやすいように掛けてあった制服を手に持つと戻ってきた乙骨に着せてやる。適当に結ぶベルト代わりの紐の見栄えの悪さに伏黒は一度解いて綺麗に結び直す。ありがとうと笑う乙骨はいつもの優しい笑顔を向ける。
「ご飯食べないんですか?疲れてるなら朝練休めばいいのに」
「だめだよ。皆と一緒にいれる貴重な時間は無駄にしたくないもん!!昼からは任務でまた1人になっちゃうし…あ、ご飯は大丈夫だから」
そう言うと刀袋を肩にかけ、いってきますと
伏黒に唇にキスをして出て行く乙骨。急いでようが2人でいる時の挨拶はちゃんとしてくれるんだなと安堵する伏黒。
これだけは誰にも邪魔されない自分達だけの約束。次に会う時は自分からしたい。乙骨の唇の感触を噛み締めながら脱いだままの部屋着と布団を綺麗に畳み部屋を後にする伏黒だった。