❏設定❏
・元ネタ①→イベント『Rise as ONE』
・元ネタ②→上記のイベント後に追加された彰人と穂波のエリア会話
(プロセカをアンインストールしているため、エリア会話のタイトルは分かりません)
❏本文❏
彰人・穂波「あ……」
彰人・穂波:街中でバッタリと出会う
穂波「し、東雲さん、こんにちは……」
彰人「おう」
穂波「さ、最近、よくお会いしますね……」
彰人「だな……とくに、アップルパイの店の前で」
穂波「え!? そ、そそそ、そんなことは……!」
彰人「別に、隠さなくてもいいだろ……」
穂波「……っ!?」
彰人「好きなんだろ、アップルパイ」
穂波「〜〜っ! は、はい……」
彰人「毎回、大量に買って帰ってるよな」
穂波「とっさに隠そうとしてしまって、すみません……自分用に二十個も買って帰ってる、なんて……恥ずかしくて、あまり人に知られたくなくて……」
彰人「……!? に、二十個……って……マジかよ……」
穂波「う、うう……っ、や、やっぱり、一人で二十個も食べてるなんて聞かされたら、お、驚いちゃいますよね……」
彰人「いや、まあ……確かに、驚きはしたが……別に、気にする必要はねえだろ」
穂波「え?」
彰人「アップルパイじゃねえけど、オレもパンケーキが好きだからな。お前の気持ちは、痛いほど分かるっつーか……一度に何枚も食えるなら、二十枚どころか、無限に食いたいって思っちまうし」
穂波「あ……ふふ、やっぱり、そう思っちゃいますよね」
彰人「おう」
穂波「東雲さんにそう言ってもらえて、なんだか安心しました」
彰人「そうか」
穂波「はい」
彰人「それに……オレも、犬が苦手だってことは、あまり人に知られたくねえし……なんか、変なところで似てるよな、オレ達」
穂波「……! そ、そうだったんですか? わ、わたし、そうとは知らなくて、あの日……」
彰人「気にすんなって。バラしたのは、お前じゃなくて、石原だろ」
穂波「ふふ、そうでしたね」
彰人「つーか……アップルパイの店の前でお前に会うたび、薄々気付いてはいたが……毎回オレにくれるアップルパイも、自分用だったんだな」
穂波「あ……っ、う、うう……は、はい……」
彰人「お前が食べたくて買ってるもんなのに、そうとは知らずに、遠慮なしにもらっちまって……なんつーか、悪いことしちまったな……」
穂波「え!? そ、そんなことは! わ、わたしが、勝手に東雲さんにお渡ししたんですから……」
彰人「まあ……お前なら、そう言うと思ったが……」
穂波「……?」
彰人「本当はお詫びのつもりだったんだが、お礼に、今度パンケーキを奢らせてくれねえか」
穂波「え? パ、パンケーキ、ですか?」
彰人「アップルパイが好きだってことは分かってるが、そっちは食べ慣れてるみたいだからな」
穂波「は、はい……って、あ、あの……! ほ、本当に、そこまで気を遣っていただかなくても……!」
彰人「それじゃ、オレの気が済まねえんだよ……お前には、ディスクドッグの件でも世話になってるし、その礼も兼ねて……」
穂波「そ、それも、わたしが勝手にお手伝いを申し出ただけなので……!」
彰人「そ、そうか……まあ、別に、無理強いする気はねえが……」
穂波「む、無理強いだなんて、そんな……!」
彰人「……」
穂波「……」
穂波(アップルパイの件も、ディスクドッグの件も……本当に、わたしが勝手にやったことで……だけど、せっかくの東雲さんのご厚意を無下にお断りするのも、なにか、違う気が……)
穂波「あ、あの……でしたら、わたしが東雲さんのお宅にお邪魔して、パンケーキを振る舞うというのは……どうでしょうか?」
彰人「は?」
穂波「えっと……わたし、家事全般が得意なんです。だから、東雲さんがお好きなパンケーキも、きっと、ご満足いただけるのではないかと……」
彰人「あ、いや……そうじゃなくて……」
穂波「……?」
彰人「それじゃ、お礼にならねえっつーか……むしろ、望月がオレにお礼をしてるみたいにならねえか……」
穂波「ふふ、そんなことないですよ。東雲さんからのご厚意は、とても嬉しかったです。だけど、なにかを奢ってもらうことより、わたしが作るお料理やデザートで誰かに喜んでもらえることのほうが、わたしにとっては嬉しいことなので……あ、もちろん、お口にあう物を作ることができるかどうかは、その時にならないと分かりませんが……」
彰人「――――…………」
穂波「……? あ、あの、東雲さん……? も、もしかして、気を悪くされたでしょうか……」
彰人「いや、そんなことねえけど……」
穂波「本当ですか、よか……」
彰人「なあ、望月……お前、ひょっとして……母親みたいって、よく言われてたり……」
穂波「――……っ!?」
穂波:図星を指されたかのように目を見開くと、ほんのりと頬を赤く染める
穂波「は、はい……よ、よく、言われます……」
彰人「やっぱりな……一瞬、うちの母親が脳裏をよぎったからな……」
穂波「わ、わたしって、変ですかね……人に喜んでもらえることをするのが、すごく好きで……」
彰人「いや、全然……むしろ……」
穂波「……? むしろ……?」
彰人(こはねは別としても、絵名といい、杏といい、暁山といい……周りにいる女共は、どいつもこいつも我が強すぎるっつーか……それに比べて、望月は、なんつーか……母性に溢れてる感じが……)
穂波「……?」
彰人(なんか、いい……)
穂波「あ、あの……東雲、さん……?」
彰人「――……っ!! わ、悪い……つい、ぼーっとしちまった……」
穂波「ふふ、大丈夫ですよ……それでは、東雲さんからわたしへのお礼は、わたしの手作りパンケーキで決まり……ということで、問題ありませんか?」
彰人「ああ、それで構わねえよ……まあ、色々とおかしい気はするけどな……」
穂波「ふふ、楽しみにしていてくださいね」
彰人「おう」
穂波「あ、そういえば……あの、すごく今更ですけど……アップルパイ、今日もたくさん買ったので、おひとつどうぞ」
彰人「ん? いいのか……さっきも言ったが、お前が食べるために買ってるもんなのに、また、もらっちまって……」
穂波「はい、もちろん……あ、よければ、そこの公園で一緒に食べませんか?」
彰人「――……!」
彰人(い、一緒に、って……)
彰人:穂波の思いがけない提案により、ほんのりと頬を赤く染める
穂波「――……!」
穂波:彰人の反応につられるように頬を赤く染めると、慌てた様子で再び口を開く
穂波「あ……っ、え、えっと……! そ、その……! む、無理にとは……言いません、けど……」
彰人「……」
穂波「……」
〜公園〜
彰人・穂波:二人でベンチに腰かけて、アップルパイを食べている
彰人「ん……やっぱ、美味いな……」
穂波「……! で、ですよね! あのお店のアップルパイは、本当に格別で……生地はさくさくだし、中のリンゴはとろっとしてて……」
彰人「甘すぎないから、いくらでも食べられちゃう……だろ?」
穂波「……っ!? は、はい……」
穂波:彰人に言葉を先読みされてしまい、恥ずかしそうに頬を染めると、いたたまれない気持ちになったのか、無意識に視線を足元のほうに落とす
彰人「……」
穂波「……」
彰人・穂波:どちらからともなく無言になる
彰人「……」
彰人(望月が……オレの家に、か……)
穂波「……」
彰人(唯一の、問題は……)
彰人:絵名の顔が脳裏に浮かび、思わずといった様子で顔をしかめる
彰人(あのバカ姉、なにか特別な用事がない限りずっと家にいやがるし……その時が来たら、しっかりとあいつを家の外に放り出しておかねえとな……)
穂波「……」
彰人「……」
彰人:ちらりと、隣りに座っている穂波を盗み見る
穂波:少しだけ気まずそうにしながら、アップルパイを口に運んでいる
彰人「――――…………」
彰人:無言で穂波の顔を眺めていたかと思うと、無意識のうちに穂波の胸元に視線を向ける
彰人「……」
彰人(なんつーか……前から思ってたが、すげえ、でか……)
穂波「……」
彰人(い、って……)
穂波「……?」
彰人「――――…………っ!!」
穂波「……? し、東雲、さん……?」
彰人(や、やべ……っ、オレ、マジで、何考えて……!)
彰人:真っ赤になった顔を片手で隠しながら、穂波が座っている方向とは逆方向に顔を背ける
穂波「……」
穂波(東雲さん……やっぱり、納得がいかないのかな……さっきから、どこか様子がおかしい気が……)
彰人「……」
穂波「あ、あの、東雲さん……お礼の件ですが、嫌だったら、別に、無理しなくても……」
彰人「――……!?」
彰人:穂波の気遣わしげな声が耳に入ると同時に、正気を取り戻したかのようにハッと目を見開く
彰人「べ、別に、無理なんかしてねえよ……」
穂波「……」
彰人:しどろもどろになりながらも、なんとか返事をする
穂波:いつになく真剣な表情を浮かべると、彰人の顔をじっと見つめる
穂波「それは、本当ですか?」
彰人「うっ……」
彰人:穂波の気迫に圧倒されているのか、あからさまに狼狽した表情を浮かべる
穂波:彰人の本心を探るように、彰人の顔をじっと見つめ続ける
穂波「……」
彰人(そ、そんな……)
穂波「……」
彰人(本心を探ろうとするような、目で……)
穂波「……」
彰人(じっと、見つめられたら……)
穂波「……」
彰人「――――〜〜~~っ!」
彰人:情けないほどにドキドキと高鳴っている心臓の音を聞かれてしまいそうで、無意識に穂波から距離を取ろうとする
彰人(そのうち、下心まで見透かされちまいそうで……すげえ、罪悪感……)
〜終〜
❏おまけ①❏
~数日後~
彰人・穂波:彰人の部屋で、穂波が作ったパンケーキを食べている
穂波「ふふ、東雲さん、お口の周りに生クリームがついちゃってますよ」
彰人「げ、マジか……手作りとは思えねえくらい美味いもんだから、つい、ガツガツと……」
穂波「今、拭いてさしあげますね」
彰人「は?」
穂波:カバンに常備しているティッシュを手に取ると、彰人の口の周りについている生クリームを優しく拭き取る
彰人「――――…………」
穂波「――――…………」
彰人・穂波:一瞬時が止まったかのように動きを止めると、お互いの顔をじっと見つめあう
穂波「あ……!」
彰人「……っ!?」
彰人・穂波:二人同時に我に返ると、勢いよく顔を真っ赤にする
穂波「す、すすす、すみません……! じょ、女子高に通っているからか、ま、周りの子達にするみたいに、つ、つい……!」
彰人「な、なるほど……そ、そういうこと、か……」
彰人・穂波:その後暫く二人の間に気まずい空気が流れるも、ドキドキと高鳴っていく心臓の鼓動を感じながら、味が分からなくなったパンケーキを無言で食べ続ける
~終~
❏おまけ②❏
絵名「ああ、もう! 彰人のやつ! なんなの、理由も言わずに家から出て行けって! 出て行かないなら、今後二度とパシリはやらないなんて言われたら、大人しく出て行くしかないじゃん!」
瑞希「ど、どーどー、えななん……落ち着いて!」
絵名「ほんと、思い出しただけでムカついてくる! なんで、私が家から放り出されないといけないわけ! ねえ、どう思う、瑞希!」
瑞希「んー、ボクから言えることは、一つだけ……弟くんが男になる瞬間を、邪魔しちゃダメだってこと」
絵名「は? 彰人が、男に? 一体、何言ってんの、瑞希……」
~終~