楓可不『大丈夫の魔法』 可不可が病院のベッドに横たわる光景をひどく久しぶりに見た気がする。
可不可の手術が成功して、HAMAツアーズが始動して、病院以外で顔を合わせるようになったのはつい最近のことなのに、いつのまにかそれが当たり前になっていた。可不可が病院暮らしだったせいで体力がないことはわかっていたし、オーバーワークの域を超えかけていることも気づいていた。直接心配だと伝えてもいたけれど、うまく伝えられず、喧嘩別れのような形になっていた可不可が倒れたと聞いた時、身体中から血を抜かれたような気がした。
何もできなかった、何もできない。途方もない無力感と一緒に可不可の冷えた手に触れた。
***
「手術は二〇歳にならないと受けられないんだよね?」
1770