🍑と🦇のお話カービィが悪夢を見るようになった。
最初は気にしてなかったが徐々に頻度が増え、だんだんとタチの悪い悪夢を見るようになった。そしてうなされて夜中に何度も起きてしまい、寝不足が続いたようだ。カービィは我慢できなくなりメタナイトや大王に打ち明けてきた。彼らは即座にカービィを夢の泉まで連れて行き、調べてみたがどこも異常がなかったようだ。ただの悪夢なのだろうか?
大王はそんなライバルに対して心配し、夜中にカービィを自室に誘って寝ていたが悪夢によって苦しみ、暴れ出す日々が続いた。大王は一緒に食事や夜遊びをして心を落ち着くことをしようとしたが、効果はいまいちだったようだ。なかなか悪夢が晴れなかったため今度はメタナイトの方に付き添って寝るように提案した。メタナイトはそのことに対してプライベートを侵略されるような気持ちになったが…今起きてるカービィの悪夢を和らげる方法を模索中のため仕方なく承諾した。
丑三つの時、オレンジオーシャンを拠点とする基地で小綺麗な部屋のベットでメタナイトは起床した。窓から見える三日月が彼の姿を照らしている。
「…ん…いゃ…」
横を向くと自身とは違う優しい桃色の球体が寝ていた。彼は嫌な汗をかき、息苦しそうな吐息を何度も行い、手足を嫌がるように動かし、今にも起きそうになっていた。
(まさかここまでとは…)
メタナイトは心配してカービィのデコに手をさすった。いつもは健気で明るく、それとは裏腹にピンクの悪魔と呼ばれるほどの強さを持つ彼が今では悪夢によって苦しめられてる。その事実が目の前で起こっていた。
「ここまで酷いとは…カービィ、大丈夫だろうか」
明日に大王と話して再度夢の泉を調べてみるか。あと夢の泉の許可をもらってカービィに入浴させてみるか。
そうやって彼の悪夢の呪縛から解き放つ方法を考えつつ頭をさすっていくとそこから黒と紫が混ざったかのような禍々しい靄が発生した。
「これは…」
天井が届くぐらい広がっていた靄を見てメタナイトは驚いた。どこかで見たことあるような、懐かしいような、そんな靄を見てメタナイトは無意識に仮面を上にずらした。その瞬間靄を吸いはじめた。カービィから出てきた靄は甘苦くて冷たく、夜な夜な食べているパフェのような味だった。
「ん……っ……!?私は一体…?」
私は今靄を吸ったいつのまに?なぜ?
それより…
カービィから出てきた靄は一体何だ?
そして私はその靄を美味しくいただいたのは…?
メタナイトは自身の行動による疑問がどんどん出てきて不安になってきた。
「…むんにゃ…」
悩むうちに隣から気にしないでと言わんばかりの寝息がした。振り向くとカービィが穏やかな顔をしながらスヤスヤと寝ていた。右手にはメタナイトの手を握っている
「……さっきよりは落ち着いている……」
そんなカービィを見たせいなのか急に睡魔に襲われてしまったようだ。先ほどの考え事もあやふやに溶けてしまい、メタナイトはカービィの隣で眠ってしまった…。
「おはよー!メタナイト!」
昨日の朝とは違う明るい目覚ましの声にメタナイトは起床した。
「おはようカービィ、…昨夜はどうだった」
「それがね!すっっっごく久しぶりによく眠れたんだ!それに悪い夢じゃなくいい夢見れたんだ!えっとえっと食べ物が食べても食べても消えなくてね!」
それからそれからとカービィの夢見の話を聞きながら
メタナイトは思った。
(もしやあの靄がカービィを苦しめた悪夢…?)
だとすると私は悪夢を食べてしまったのか?
そのおかげで彼は気持ちよく眠れたのか?
…自分がナイトメアから作られた悪夢の子だから
あの靄を美味しくいただけたのか?
「メタ?どうしたの」
ハッと目線をカービィに向けると楽しそうな顔はしてなく、心配そうな顔をしていた。
ああ、どうやら昨夜のように考え事をしてしまったようだ。彼が一生懸命に久方に見た夢の話をしているのに。
「すまない、どうして其方が悪夢を見なくなったのか考えてしまった」
「そうなんだよね〜…もしかしてメタが夢の中で悪夢をやっつけた」
「そうかも…しれないな」
流石に食べたとは言えなかった。そのことを言うと彼はとても心配してしまうからだ。そもそもカービィの悪夢が払うことができたんだ。この件については昼ごろに大王に話そう。私の生まれもバレてしまうが…
そんな思いを隠し、カービィと共にいつも通りの基地で朝食前のアフォガートを嗜んだ。
その日の深夜、カービィが大袈裟に泣きながら添い寝を強請った。どうやらまた悪夢を見たらしい。
…これからカービィとずっと添い寝し続けて、夜な夜なパフェの代わりに悪夢を食べるのだろうか。
(続く)