HOME SWEET HOME(3) そうして山の暮らしが始まった。
朝早くにイサミは花の仕入れのために車で山を降りる。確かに店からは遠くなったが、車で通えば大した違いではない。一方スミスはルルの保育園の時間に合わせて起き、慌ただしく朝の支度をしていた。
「ルル!もうすぐ出るぞ!」
「スミス、髪やって」
「え、今から!?」
子供というのは思う通りには動いてくれないものだ。スミスはその太い指からは想像出来ぬほど器用にルルの髪を結い上げ、後に青いリボンを結ぶ。ルルは最近この青いリボンがお気に入りなのだ。
「ええっと、水筒は入れたし着替えもOK、よしイサミは弁当持って行ったな!」
昨日のうちに作って冷蔵庫に置いておいたランチボックスがちゃんと消えているのを確かめて、スミスは今日も元気に車のエンジンを掛けた。庭では初夏の花が満開だった。
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