ワンドロお題「レクイエム」年に一度、ヒュンケルが絶対にひとに会わない日がある。
「勇者の日」と呼ばれる祝祭の日。
旧魔王軍を打ち滅ぼした栄誉を称える鐘の音が鳴り響く。人里離れた山奥にも、その音がどこからか響く。人間にとっては祝祭の口実は何でもいいのだ。
ヒュンケルの生い立ちは、実はあまり知られていない。
本人も、本人から直接聞いたダイ・ポップ・マァムも、口外していないからだ。深い仲となったラーハルトは知っているが、勿論誰にも話していない。
だからこの日が彼にとってどういう意味を持つのか、レオナですら知らない。
この日になると、ヒュンケルはどこか一人きりになれる所に籠る。旅先であればどこかの穴倉か、樹々の中か。
街中であればどこかの倉庫か。
1073