雨宿り突然の雨だった。
灰色の厚い雲が太陽を飲み込むかのように光を遮り、暗くなったと思うと大粒の雨が降りだした。
露店の店主達は慌てて品物に蓋や布を被せ、通りを歩いていた人々は付近の軒下へと慌てて逃げ込んでいく。
大通りを歩いていた青年も周囲の人に釣られ走り、付近の軒下へと滑り込んだ。
すでに何人か雨宿りをしていたが、すみません、と呟きながら人と人の隙間に捻りこむ。
腕の力を解き、胸に抱えていた厚みのある書物をぱらぱらとめくり雨粒は落ちていないか、文字は滲んでいないか、丹念に調べる。
幸い表紙の端が濡れただけで中は無事のようだ。
青年は自身の袖で濡れた箇所をそっと撫でると、安堵の息を吐いた。
隣にいた女が柔らかな微笑みを浮かべ青年に声をかける。
2026