花吐き病の輝 きっかけは朝のコーヒーだった。なんか胸につかえるな、と思って二、三度咳をすると、なにか平べったいモノが口の中に張り付く。ぺっと吐き出してみれば、それは黄色い花びらだった。タンポポのような、細長い花。刺身でも食ったか? 菊の花が小さく添えらえていることがあるけれど、あれを実際に口に入れたことはないなあ。そもそも、昨日は刺身を食っていないし。
料理のなにかトッピングに混じっていたのでは、ということにして、とりあえずその場は落ち着いた。コーヒーが美味しく飲めれば、それでいいのだ。
昼過ぎから、なぜか胸のつかえが取れなくなる。こほこほと目立たないように咳をしてみると、今度は白い小さなひらひらした花弁が落ちてくる。カスミソウではないのか? さすがにそんな花食ったことないぞ。言い訳が出来ずに頭を悩ませつつ、でも人前ではまだ咳を我慢することができた。誰も俺の足元に散らばる花弁など気にしない。
2513