スコーーーーーーン 舞台は暗転して暗闇に覆われている。遠くから近付いてくるように、バイクのエンジンを蒸す音が大きく聞こえ出す。それはまるで、獣の唸り声のような低く響く音色だった。
直後、暗転の中、長身の人物が僅かに腕を上げたのがシルエットで分かった。奥から漏れる光が、後光として彼を照らし出す。そしてその腕がギターのボディにそっと添えられた時、エンジンを蒸す音を追い越すように、スリリングなギターリフが鳴り響き出す。
歓声。
客席から、自然と期待の声が湧き出た。
パッと細いスポットライトがギタリストを照らし出す。いつはニコニコと微笑んでいる彼の表情は、いつになく真剣だった。繰り返される高速の隙の無いリフ。刻むようなドラムの音に合わせて、彼の体がリズムを取って沈む。そして舞台中央、暗闇から突如現れたような、低い呻き声から溜めて繰り出される、高らかで突き抜けるようなボーカルのシャウト。
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