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    鵜野白幼少期なりチャ
    鵜野/白鳥
    https://ccfolia.com/rooms/5X8JhLj-q

    ##ログ

    鵜野白 馴れ初め初夏の夕暮れ。梅雨を少しずつ感じさせる湿った空気が頬をなでる。
    大学生だった鵜野澪は、仕事ではなかったが小説を書いていた。今日はそのためにとある近所の噂を確かめに歩いている。
    噂――住んでいる小学生の間で流行っていると小耳にした、「フランス人形の女の子」の噂だ。
    夕方になると、公園や図書館にフランス人形のような華美な服を着た女の子が現れ、彼女を一目見ると幸運が訪れるのだと言う。
    題材になるかもわからない小さな噂だが、まあそれでもいいだろう。公園はもうすぐそこだ。
    本当に女の子はいるのだろうか。

    鵜野澪 : 「・・・ここ、か?あんな噂本当に・・・」

    白鳥美姫 : 「・・・」

    鵜野澪 : 「・・・君は」

    白鳥美姫 : 「・・・だ、だれですか」

    鵜野澪 : 「あ、えと、俺は……澪と、言います。『見ると幸せになれるお人形』の話を聞いてきたんだ。何か……知らない?」

    白鳥美姫 : 「ああ……それは、えっと……たぶん、わたしのこと、だと思います」

    鵜野澪 : 「君の?」

    白鳥美姫 : 「ここに居ると、たまに見にくる子がいて、みんなわたしを指さしておにんぎょうだ!って。それのことですよね」

    鵜野澪 : 「……とってもかわいいお洋服を着てるから、かな。よく似合ってるね」

    白鳥美姫 : 「……、あ、ありがとう。」

    鵜野澪 : 「どういたしまして。君はいつもここに?」

    白鳥美姫 : 「いつもじゃないよ。でも、くる日もおおい、です」

    鵜野澪 : 「そうなんだ。いつもは何して遊ぶの?」

    白鳥美姫 : 「別に……宿題が終わったら、ぼーっとしてる。公園ってひとりじゃ遊びづらいから」

    鵜野澪 : 「……。遊びに来てるわけじゃないの?」

    白鳥美姫 : 「ちがう。待ってるの。うーん……だいたい、7時くらいまで」

    鵜野澪 : 「待ってる……ひとりで?危なくない?」

    白鳥美姫 : 「……わかんない。でも、家に帰るのは……」

    鵜野澪 : 「……そっか。じゃあ今日は俺も一緒に待ってていい?」

    白鳥美姫 : 「え?な、なんで?」

    鵜野澪 : 「俺も少し暇してたんだ。だめ、かな?」

    白鳥美姫 : 「……ううん、いいよ」

    鵜野澪 : 「ありがとう。何して遊ぶ?」

    白鳥美姫 : 「どうしよう、わたし、公園でちゃんとあそぶのはじめて!ええっとね、……ブランコ、おしてもらってもいい?」

    鵜野澪 : 「もちろん。さあ、座って」

    白鳥美姫 : 「えへへ、じゃあお願い!」

    そうして少しの間、二人は小さな公園で遊んだ。少女は遊ぶのに不慣れな様子だったが、それでも笑顔は絶えなかった。
    空が少しずつオレンジから紫へ、紫から濃紺へと色を変えていく。

    白鳥美姫 : 「……暗くなっちゃったね」

    鵜野澪 : 「そうだね。もう帰る時間かな?」
    白鳥美姫 : 「……うん、たぶん。ママとあの人も落ち着いてるんじゃないかな」

    鵜野澪 : 「……あの、もし、よければ、……また、ここに来てもいい?」

    白鳥美姫 : 「……ほんと?きてくれる?」

    鵜野澪 : 「君さえよければ」

    白鳥美姫 : 「……えへへ、変なおにいさん。いいにきまってるのに」

    鵜野澪 : 「ありがとう。じゃあ、またここで遊ぼうか。……もう暗いけど平気?近くまで一緒に帰ろうか?」

    白鳥美姫 : 「ひとりでへいき!慣れてるもん。ありがとう」

    鵜野澪 : 「……そっか。気をつけて帰ってね」

    白鳥美姫 : 「うん。またね、おにいさん!」

    鵜野澪 : 「うん。また……あ、お名前、聞いても……いいかな?今更、だけど」

    白鳥美姫 : 「……まだ内緒!つぎ会うときに、おしえてあげる」

    鵜野澪 : 「ふふ、分かりました。楽しみにしてるね。……じゃあ本当に気をつけて」

    白鳥美姫 : 「おにいさんもね。ばいばい」

    鵜野澪 : 「ばいばい」

    公園を後にする澪と少女。その後何度か夕暮れ時を共にするふたりだったが、ある日、鵜野からある提案をする。

    鵜野澪 : 「君は……普段、小説とか、読む?」

    白鳥美姫 : 「小説?うーん、授業で読むくらいかな。どうして?」

    鵜野澪 : 「実はね、小説家を、目指してるんだけど、……なかなかうまくいかなくって。なにかヒントをもらえないかな」

    白鳥美姫 : 「小説家!?すごいね。ヒントかあ……うーん」

    鵜野澪 : 「まだまだ全然なんだけどね。……なんでもいいんだ。君はどんなお話が好き?小説じゃなくても……漫画や、映画とか」

    白鳥美姫 : 「わたしは~……恋のおはなしがすき。おひめさまと王子さまが、しあわせな恋をするの。」

    鵜野澪 : 「おひめさま……なるほど、考えたこともなかったな」

    白鳥美姫 : 「王子様はね、おひめさまを幸せにしてくれるの。おひめさまに、王子さまはひとりでいい。そう思う」

    鵜野澪 : 「そう……だね。……代わりがきかないたったひとり、か。……うん、わかった。ありがとう。よかったら……君の話を、書いてもいいかな?」

    白鳥美姫 : 「……わたしの?」

    鵜野澪 : 「うん。かわいいおひめさまのお話。どうかな」

    白鳥美姫 : 「……おひめさまかあ」

    白鳥美姫 : 「いいよ。王子さまは、黒い髪のひとがいいな」

    鵜野澪 : 「……?うん、ありがとう。書けたら、いちばんに持ってくるよ。約束」

    白鳥美姫 : 「うん、約束。ぜったいね!」

    鵜野澪 : 「うん、ぜったい。じゃあ、今日は何して遊ぼうか」

    白鳥美姫 : 「えへへ、今日はね……砂場で遊べるおもちゃ持ってきてみたの!みて!」

    鵜野澪 : 「ふふ、いいね。お洋服を汚さないように気をつけて遊ぼう。……俺も」

    日が傾いてから沈むまでの間。たったそれだけの時間だったが二人にとっては十分だった。
    そうして小さな思い出は大切にしまわれていく。
    いつか丁寧に紐解けるように。優しく振り返れるように。
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