恋故の疾苦「お前の『愛の挨拶』はそういう解釈なのか?」
すぐ後ろから竜崎が放った言葉は、朝日奈の肩をビクッと震わせた。
「俺が知っているのは…清らかさと鮮やかさが備わっていたと思うが。」
朝日奈は、忠実に竜崎の言葉を守っただけ。
-泣いている暇があるのなら、練習するんだな-
今日は、竜崎が遠方のバイオリン講師のところへレッスンを受ける日だった。
朝から一度も会えなくて寂しくて…
「何を思って弾いていた?」
一向に朝日奈は、竜崎の方を振り返らなかった。
「はぁ……」
少しの沈黙を破ったのは、竜崎。
「後ろ…向くなよ。」
言葉とともに、包むように背後から抱きしめられた。
背中から伝わる竜崎の温もりと、鼓動が朝日奈を落ち着かせた。
「お前が求めているのはこういう事だろう…寂しかったのか?」
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