愛されたがりの愛し方「護衛?」
フェイスのおうむ返しに、キースが頷く。ウエストセクターの研修チーム四名、その日常生活の中心であるリビングルームには、食欲をそそるトマトとガーリックの香りが漂っていた。時刻は午後七時十分前。ちょうど夕飯時である。首肯の後に「あいつら、遅ぇな」とまだ帰宅していないチームメイトたちへの文句を挟ませてから、キースは話を続けた。
「ブラ……お前のオヤジさんの伝手というか何というか、オレにはそこまで詳しいことはわかんねぇけど……とにかく、大使の娘さん直々のご指名だと」
キースが不明だと言う「詳しいこと」の大半は、彼が聞き流したか忘れたかのどちらか、またはその両方であろうことがフェイスには容易に想像できた。夕食の準備がほぼ整ったカウンターテーブルの前でキースから聞いた話を要約すると、さる国の大使の娘が、数日に渡りニューミリオンに滞在予定である。その間の護衛を、警察ではなく【HELIOS】の『ヒーロー』に頼みたい――それも、ベテランであるメジャーヒーローではなく、入所したばかりのルーキー、フェイス・ビームスを名指しで希望している――らしい。
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