ぼくから失われたすべてのうつくしいもの 翻る裾の汚れた白衣が、飛び立つ鳥を思わせた。視界の端では陽光を受けてさんざめく輝く水面が揺れている。頭上を鴎に似た鳥が横切っていった。一目散に駆けて行く小さな背中が眩しくて、クロードは目を細めた。両親に抱き締められ、緊張の糸が切れたらしい泣きじゃくる子供は普段の言動が嘘のように年相応に愛らしく見える。
「良かったな」
心の声が漏れ出たのかと思い、クロードは反射的に口元を手の平で覆った。次いで、横に並び立つ男に視線を向けると、鳶色の視線に搗ち合う。そこでは青空を背にしたボーマンが、柔らかな目尻を更に下げて笑っていた。
「……ええ。本当に」
同意すると、クロードは再び両親との再会を喜ぶレオンへと目を遣った。猫に似たフェルプール独特の耳は緩やかに傾いている。
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