素晴らしき人類賛歌
世界は、シンプルな方が良い。
あるがまま、それをそれとして。例えば、リンゴが黄色だという人が居れば、その人にとって黄色でしかなく、信号が緑だという人が居れば、緑でいいのだ。
というのも、往々にしてそうでないことがある。
信号は青だと言い聞かされ、リンゴは赤だと石を投げられる。そういうものが、蔓延っている。
それが、わからなかった。
ナイフは、気がついた時にはなかった。無いから、殴った。そのうち、殴るものもなくなった。仕方ないから噛みついた。
血が飛び、骨が砕け、右腕が飛んだ。いつしか、べっとりと髪を濡らす血が、頬を裂いた骨の欠片が、零れ落ちた眼球が、誰のものなのか分からなくなった。ふみつけた感触だけ、如実に伝わる。ああ、もしや俺のだったか。
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