無題 うちの主将は、怖い。
上背もないし、身体も細い方や。でも、堂々と淡々と粛々とちゃんと生きてる姿は誰よりも怖い。俺よりバレー上手くない奴なんて怖くもなんともない。そう思ってた時期が俺にもあったなあなんて、北さんの背中を見ながらいつも思う。
俺より丁寧にボールに触る人に初めて会った。俺よりバレー下手やけど、俺よりバレーをちゃんとする人に初めて出会った。バレー以外にもバレーと同じようにちゃんと出来るんはとてつもない事やと今になって思う。
尊敬して、正論で詰められたら言い返されへん。褒められたら嬉しい。好きやと思った。
せやから、怖い。
「お前の目きしょいねん」
始めて好きになった人に言われた言葉。二年先輩の同じバレーチームのキャプテンでセッターやった。放課後俺だけ呼ばれて、二人きりになれたん少し嬉しかった気持ちを打ち砕いた。心底冷めた目で少し怯えながら、そう言われた時のこときっと俺はずっと忘れられん。まだ恋の自覚もきしょい目も自覚すらしてなかった。
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