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    澄時くん

    @sumi_torkil

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    澄時くん

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    人を選ぶ要素盛りだくさん!やったね!
    ・メンタル弱々しいアロケル描写
    ・過去~未来のキャラクター体格捏造描写
    ・色々

    文章を書き慣れていないのでミス等何かあれば教えていただけるとうれしいです。

    長命者になっちゃったアロケルくんのロノアロ※4年後想定の話です



    最初に診てもらったのは十六の時だった。
     ロノウェさんとプルソンさんとボクの三人で話していて、その場の流れで声変わりも精通も経験がないと言ったら驚かれた。ボクは大して気にしていなかったけど、一応診てもらうべきだと強く勧められてアンドラスさんの元まで連行されたんだっけ。
     アンドラスさんに全身を色々検分され、結局
    「特に疾患は確認できないし、今のところ成長期が遅いタイプの可能性が高いかな」
    と言われた。曰く
    「骨がね、成長途中の形をしているよ」
    と。
     メギドラルでユフィールが使っていたのを、ヴァイガルドで再現したらしい機器でボクの骨が投影される。いや見せられてもわかりませんよ。
    「骨っていうのはね、骨の長さが伸びてからも密度や太さが成長を続けるけれど、キミのはまだ長さも伸びるヴィータの骨だね。外性器の発育もまだ未熟ではあるけどきちんと成長を――」
    「あー。詳しく説明しなくていいですいいです」
     やっぱり二人が心配しすぎだったんだ。待ってたらしい二人にもそれを伝えると安堵したように笑っていた。
    「成長期が遅いタイプはデカくなるって聞いたことあるな。俺は追い越されるかもな」
    とロノウェさんが笑う。
    「成長には個人差が大きいから、変に不安にさせるのも妙な期待させるのも良くないよ。心配が続くようだったらまた診せに来てね」
    とアンドラスさんは慎重だった。この人ホント意外なほど真面目だよね。



     このことを思い出したのは、プルソンさんの飲酒解禁祝いで三人で飲んでいるときだった。
     ボクはプルソンさんより一足先に飲めるようになったけれど、そんなにお酒は好きじゃない。けど、この日はなんとなくおいしかったし、楽しかった。雰囲気に酔うってやつなのかも?
     酔っていたのか口が軽くなって、あの日以来結局特に声変わりも精通もしてないし、なんなら身長も伸びてないことを話してしまった。あの日の再現のようにプルソンさんが心配しだす。成長期が遅いだけですって。
     というか身長と声変わりは近くにいて気付くでしょ。
     ロノウェさんの方はというと、心配げな顔はしてたけどプルソンさんのように騒ぐでもなく、なにやら神妙にしていた。
    「今日じゃなくていいから、やはり後でもう一度診てもらおう」
    いや成長期が遅いだけですって。妙な態度に楽しかった気持ちがなんだか覚めてしまった。
     四月になっても夜はまだ冷える。お酒で火照った体に外からの風が冷たくて、かすかに身震いする。



    ***



    「え、売ってくれないんですか?」
    「ダメダメ! キミまだ子供だろう? お酒飲んじゃダメだよ」
    「頼まれたんだけどなあ。飲むのはボクじゃないしそもそもボク成人してるんですが……」
     頼まれた酒を買おうとして、酒屋の店主に断られた。そう幼い容姿でもないと思うんだけど。……高齢だから目が悪いのかな?
     ――……まぁ、いいか。買おうとしただけ義理は果たしたってことで。大した手間でもなかったのに、なんとなくゲンナリしてため息をつく。



     ロノウェさんから外出に誘われたのはこの日の午前中のことだった。
    「ぼんやりしてるな。気晴らしに一緒に出かけないか?」
    「う~ん……」
     誰かと一緒に遊びに出かけるのは結構好きだ。だがこの日は面倒くさいというかさほど気分じゃないというか、だからといって断りたいほど嫌なわけでもないというか、妙な気分だった。思えばここ最近そんな気分の日が多い気がする。
     生返事でいると
    「嫌じゃないなら出かけるぞ。ほら」
    と手を引かれ、半ば無理矢理部屋から連れ出された。この人結構強引だよな……。
    ポータルを出るところで仲間に声をかけられいくつか買い物を頼まれる。帰り際に二人で手分けして買うことにした。



    「アロケル? どうしたんだこんなとこで。頼まれたものは買えたのか?」
     ロノウェさんと合流する予定の場所にも向かわず、通りの端でぼんやりしていたら、当の本人に声をかけられた。ちょうど合流のために通る場所だったらしい。
    「それが、お酒を売ってもらえなくて……」
     ロノウェさんが一瞬ハッとした顔でボクの方を見る。その反応になぜかかすかな苛立ちを覚える。
    「すまない。俺が買ってくるよ」
     何で謝るんだろう? すぐ取り繕い、店の方に早足で向かうので、どうせ合流する予定だったからと追いかける。
     一緒にお昼を食べた時はおいしかったし、なんだか楽しかった。春風は暖かくて気持ちが良かったし、うとうとと眠りかけたところをロノウェさんに起こされたのも、悪くはなかった。
     少しだけ高揚していた気持ちは少しずつ萎んでいって、見る影もなかった。



    「キミ弟にお酒頼んだの? ダメだよ~そういうのは年上がちゃんとしないとね」
     戻ってきたさっきの店で、さっきの店主がロノウェさんに小言を言っている。
     小言を苦笑で流しているロノウェさんに妙に苛つく。本当はロノウェさんは何も悪くないのに。
     兄弟を否定した方が話が長引いて面倒くさいのはわかってるが、なぜだか否定したかった。年上ぶってるけど、その人たった二つしか違わないんですよ。メギドの年齢だったらもっと――。
     近頃妙に落ち着かず、神経がざわついてばかりだ。自分を落ち着けるようにため息をつく。……店の外で待っていればよかった。わざわざついてこなければよかった。そもそも、出かけなければよかったのかも。
    「買えたよアロケル。行こう」
     買い物を済ませたロノウェさんに話しかけられ、自分がボンヤリしていたことに気付く。もうこんなところに用はない。さっさと帰ろう。ロノウェさんが困ったような申し訳ないような、気遣わしげな目で見てきた気がするが、見なかったことにして店を出る。



     別に困らない。特に困ってない。お酒買えなくたって、別にボク自身が飲みたいわけでもないから、大して困らない。
     それに、サブナックさんや、他のメギドには隠しているつもりらしいバエルのように、単独行動に障りが出るほど幼い容姿でもないわけだし。
     そもそももっと若い姿の頃から一人で旅してたしね。今更何も困らない。だけど――。
    「なんでそんな大人ぶるんですか? ボクと二つしか違わないじゃないですか」
     少しだけ先を歩いていたロノウェさんが振り向く。どんな顔をしているか見られずに俯いた。
     苛つく。自分の声がいやに鋭いのをどこか他人事として感じていた。――八つ当たりだ。妙に鼻がツンとする。
    「ロノウェさんだって結構童顔じゃないですか。プルソンさんだって、女の子と間違われてた頃と大して変わってないし」
    「アロケル……」
     ポータルまでの帰り道。舗装もされていない道をまばらな並木が囲む。新緑の木々は思い思いに枝葉を伸ばし、ボク達にわずかな木陰を落とす。さやさやとなる葉音は変化の季節を歓迎しているみたいだった。
     ボクは……。ボクだけが俯いている。



    ***



     ロノウェさん達に言われたとおりアンドラスさんに診てもらったのは、一緒にお酒を飲んだすぐ翌日のことだった。アンドラスさんは何故かボクが来るのを待っていたようで、少しだけ心がざわついた。表情はいつも通りだったけど。
     前回よりも丁寧に診察され、一通り終わった後、なぜかバティンさんが二人分のお茶を淹れて置いていった。なんなんだろう。
    「アロケル。よく聞いてね。」
     アンドラスさんがちょっとだけ息をついてから話し出す。
    「アロケルの体は成長を止めてるみたいなんだ。毎年ある程度計測はしていたけれど、十六歳の記録から変化がないんだよ」
    「はぁ……」
     まぁそれはわかっていた。実際身長伸びてないし。
     それ自体は良くある話だ。個人の体質や栄養不良で成長が止まってしまうなんて、本当によく聞く。だから特段驚きはしなかった。
     でも。でもその先は、言わないで欲しい。
    「……より正確に言うと、アロケルの体は成長の兆しをそれそのままに残して、変化を止めているんだ。」
    以前にも見せられた投影画像を見せられる。
    「一番わかりやすいのは骨だね。まだ伸びる余地を残したヴィータの成長が栄養不良や疾患により途中で止まった場合、骨もあわせて変化する。一方、キミのはまだ成長するヴィータの骨の形なんだ。……でも、十六歳の記録から伸びていない。その他の体の状態も……いや、これはいいか」
     アンドラスさんがもう一度息をつく。多分、この人なりに慎重に話そうとしているんだ。
    「――以前の保健教室を覚えているよね? ココにも何人かいるし」
     ――どうか言わないで欲しい。
    「これは、長命者化の兆候だよ」



    ***



     そんなわけで、まあ別に長命者になったからといってこれといって困ってはいないのだけれど、なぜだか落ち着かなかった。ロノウェさんがボクを誘ったのももしかしたらそんなボクを気遣ったのかもしれない。別に、ホントに困ってはいないのだけれど。
     ボクより一回り華奢だったプルソンさんが、ボクより一回り大きくなって、ちょっと癪だっただけで。
     追い越されるかもなんて言ってたロノウェさんの身長が離れるばかりだったのが、ちょっと癪だっただけで。



     ロノウェさんがそっとボクの手を引き道の端にまで連れていく。荷物を地面に置いておもむろにボクに向き合う。ごくわずかに体をかがめ、顔をのぞき込むように目を見てくる。以前は視線の高さなんてほとんど変わらなかったじゃないか。どうして。なんで。
     顔に手を伸ばされそっと手を触れられて、ようやく自分の頬が濡れていることに気付く。
    「ごめんな」
    「……何に謝ってるんですか?」
     ロノウェさんが悪いわけじゃない。ボクが勝手によくわからない怒りに身を任せて八つ当たりしてただけ。なのになんで謝るんだと更に腹が立ち、余計にボロボロと涙がこぼれる。ヴィータって腹を立てても泣くんだな。
    「ごめんな。――なんとなく気付いてたんだ。オマエが成長しない自分を不安に思ってるって」
     不安に? ――ボクが?
    「それに……なんとなく気付いてたんだ。オマエは長命者なんだろうなって。それを寂しく思ってるんだろうなって」
     寂しく? ――ボクが……?
    「なんですかそれ。ボクがそんな繊細な反応すると思うなんて、ロノウェさんの思い込みじゃないんですか」
    「そうかもしれない。でも、落ち込んでたのはホントだろ。だから、上手く気遣ってやれなくて……ごめん」
     陰りはじめた日がボクにかかる木陰を伸ばしてゆく。湿った頬に風が冷たい。
     違うと言いたいのに、泣きながら何を言ってもなんの説得力も持てない気がした。何を否定したいのかもわからない。そもそもボクはなんで泣いてるだろう。何も泣く理由なんてないのに。
     寂しくなんて……。
    「ホントは……」
    「うん」
    「ホントはうすうす気付いてたんです」
    「うん」
    「多分、成長も老化も、止まってるって……。でも、なんか、なんか嫌で……」
    「うん」
    「……そういえば、プルソンさんも大きくなりましたよね。あんなに何回も服や靴を変えて、ボク大変だなーって見てました。知ってます?この間プルソンさんてば髭剃ってたんですよ? ほとんど生えないけど、一応って……。ロノウェさんもそうだし」
    「うん」
    「ロノウェさんも鎧を作り替えてましたよね。やっぱり小さくなっちゃったんだ。仕方ないですよね、身長伸びましたから。肩幅とか腕も大きくなったのかな。なんか大人のヴィータみたいですね」
    「うん」
    「マルファスさんも飛ぶときの小回り効かなくなっちゃったらしいです。アモンも、あんなにちっちゃかったのに、もう追い越されちゃったかも?」
    「うん」
    「というか、ロノウェさんもプルソンさんもメギドとしてはかなり若い方ですよね。なのにヴィータだとすぐ大人になっちゃって、大変ですよね」
    「うん」
     もう何を話せばいいのか、何を話したいのか自分でもわからない。涙と連動してるみたいに、脈絡の怪しい言葉が勝手にボロボロこぼれる。
    「でもボク、ずっと変わらないんです」
    「……うん」
    「プルソンさんが小さくなった服を下の子に譲ってるとき、ボク同じ服を擦り切れるまで着てました。チェルノボグさんが前に洗い替えの寝間着くれたとき『どうせ大きくなるから』って少し大きいのくれたんですよあの人。それで裾を折って着てたら、もう折り癖がついちゃって、洗ってもとれなくなっちゃいました。あの人『もう少し大きくなったら、俺の若い頃の服をやる』とか言って。物持ち良すぎですよね。まぁ、もうその日は来ないんですけど」
    「うん」
    「昔はあの人と同じくらいあったのに、もう一生同じ視線にはならないんですよね。あ、でもあの人ほんの少しだけ身長が縮んだんですよ。知ってます? ヴィータって腰が曲がらなくても加齢で少しだけ身長が縮むんですって。あの人『俺が縮みきる前にお前が追いついてこい』なんて笑ってたけど、さすがにチェルノボグさんが多少縮んだって同じ視線にはならないですよ」
    「うん」
    「だってボク、ずっと変わらないんです……」
    「……うん」
    「みんな、みんな変わってくのに。あなたも……」
     声が詰まってうまくしゃべれない。喉や鼻に熱いものが詰めこまれてるみたいだ。ヴィータって泣くときなんで声をあげるんだろうって思ってたけど、なんだ、勝手に出るんじゃないか。
     ロノウェさんは日が陰りきるまでずっと、下手くそに泣くボクの涙を拭っては背中を撫でてくれていた。



     ポータルからアジトに帰還したとき、見張り当番の仲間以外になぜかプルソンさんとアンドラスさんもいた。
     みんなが「おかえり」とボクらに声をかけたあと、ボクの顔を見てギョッとした気配がした。まだ完全には止まっていない涙を見られたくなくて、ロノウェさんの影にかくれるように下がる。その行動がなんだか子供じみていて、自分で嫌になった。
    「あぁ、ただいま」
     ロノウェさんの挨拶に隠れる形で、ボクもおざなりな会釈と併せただいまの返事をする。聞こえるか怪しい小さな声しか出なかったが、返事はしたからもういいだろう。プルソンさんとアンドラスさん達が心配そうにこちらを窺っていたが、ロノウェさんをチラと見てからは特に話しかけてはこなかった。
     手をひかれるままたどり着いたのは、自室ではなくロノウェさんの部屋だった。ベッドに座らされボンヤリしていると、ロノウェさんがランプに灯をともす。もう暗くなっていた部屋がぽうっと明るくなるのに、少しだけ息を吐いた。灯りがともる瞬間はなぜかいつも少し落ち着く。でも、風に当たって冷えた体までは暖まらなかった。
    「アロケル」
     隣に座ったロノウェさんが話し出す。
    「――置いて行かれるのは、怖いし、寂しいよな」
     この人ってボクの感情を推測で話してくるところがあるよね。……今はなぜか否定できないだけで。
    「じゃあ置いていかないでくださいよ」
     そうだよ。別に身長なんか気にしてない。見た目が若くてお酒が買えなくたって構わない。ボクって要領いいから、その程度のこと全然困らず暮らしていける。けど、けど――。
    「別にボクの見た目なんかこのままでもいいから、ロノウェさんもおじさんにならないでくださいよ……」
    「それは……努力はするが……」
     そうなんだ。ボク、寂しかったんだ。置いて行かれたくなかったんだ。
     ボクって結構約束を……まぁそれなりには守るメギドなんだよね。うっかりやら何やらで守れなかったことはあるけど。ボクが誰かにした約束をみんなが思ってるよりは守るんだよ。
     でも、誰もボクに対して約束をしてはくれないんだ。
    「置いていかないでよ……」
     引きかけていた涙がぶり返す。
    「アロケル」
     名を呼ばれ、手を握られる。
    「きっと、全く変わらないでいることって、無理だと思うんだ。変わった方がいいことだってたくさんあるしな。それはきっと、お前だってそうだよ」
    「……」
    「その代わり……変わらないものもあるってこと、お前にきちんと証明するから」
     ロノウェさんが少しかさついた指で、またボクの涙を拭う。多分、ボクの涙を拭いすぎたんだ。
    「一緒にいて、俺たちの姿がどんなに変わっても変わらないもの――変わらなくてよかったって思えるものがちゃんと存在するって、証明するから」
    「それは………………約束ですか?」
    「あぁ……約束する」
     身の内を風が吹き抜けるような寂しさは、決してボクを手放してはくれない。でも、それとは別の暖かさがボクの手を掴んでくれている間は、このままでもやっていけるのかもしれないと、そう感じた。
     体ごとロノウェさんに傾いたら、そのまま受け止め抱きしめてくれる。以前より大きくなってしまった体がやっぱり少し寂しくて、とても暖かかった。
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