落陽何度も繰り返して見飽きた陽の光でも、こうしてゆっくり眺めると、どこか感傷に浸ってしまいそうになる。
アダムの因子を持つ彼――榊遊矢に接触したことで、これから私達の計画はアクセルを踏んだように進んでいくだろう。
もう少しでG・O・Dは覚醒するのだろう。そうすれば、私の長い長い恩返しも終わる。
ベッドで眠る素良はあどけない子供の姿で。
私達と共に時を越え調査に協力してきた仲間なのは分かっているが、その小さな身には大きな願いと代償がのしかかっている事を思うと、つい眼を逸してしまいそうになる。
しかし、私はこの仕事を止めることはできない。ゴールまで止まれはしない。
せめて素良が妹とまた楽しい日常を過ごせるように、私の恩返しが終わるように、今はただ走り続けるしかできない。
「蓮、ここに居たのか。EVEが呼んでいる。どうやら遊矢と零児がデュエルを行うようだ。」
素良のメディカルチェックのためか、片手にカルテを持ったアイザックが部屋に入って来た。
「ええ、今行きます。」
未だに時間が過ぎる感覚は掴めない。
ドアに手をかけたところでようやく、日がかなり傾いて空の色が濃くなっていることに気がついた。