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    石砂糖

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    石砂糖

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    この小説は一切公式ではありません
    なんとなくキャラを掴みたいなあと思って書きましたが余計分からなくなりました あーあ

    A×B×S×O×R×B坐塔くんって、実は双子らしいよ。だなんて誰が言い始めたのだろうか。

    路地裏で、学校の裏で、或いは意味のない階段超芸術トマソンで双子である弟或いは兄との姿を見たと。挙げられた何処にも2人で行った覚えはないが、何故かそんな噂が本人である私の耳に入ってきてしまっている。勿論事実ではない。
    こういう噂を流すのなら援助交際をしているだとか、教師と秘密の関係を持っているだとかのほうが流しやすいだろうに、何故あえて双子がいる、という噂なのかはオレには理解できなかった。

    これも今の自分の悩みである"何かしらの喪失感を感じ続けている"に関連するのだろうか。
    いつからか何かがぱったりと途切れてしまったような気がしてならない。それが何だったのかを思い出そうとしてもただ時間がすぎるばかりだった。
    そんな中手に入れた噂の情報はあまりにも怪しいものだったが、それでも確かめずにはいられなかった。もしこの噂が本当ならば、その喪失感を取り戻せるかもしれないと焦り、そして期待していた。

    路地裏は場所が多すぎる。意味のない階段は何処にあるかわからない。という簡単な消去法で学校の裏を散策することにした。もし見つからなかったらスマートフォンで意味のない階段トマソンを探せばいいだろうという安易な考えを持って。

    ざくざくと落ち葉を踏みしめて人の居ない学校の裏と思わしき場所を練り歩く。途中部活をしているであろう何人かの生徒や先生らしき人を見かけたが、話しかけることもなく、一応目的の双子とやらを探す。
    寒い風がびゅううと音を立て吹いて、木を揺らして葉を飛ばしていく。上着を着ていて助かった。しかしこれから更に寒くなって、日が落ちる時間も早くなるのだろうと思ったら少し憂鬱になった。

    「あ」

    思わず声が出てしまう。探し始めて数十分くらいだろうか、ようやく目的のものを見つけた。確かにそこにはぼくの無くしたものが、喪失感の原因である人間が立っていた。
    彼を見てやっと、なぜ喪失感を感じていたのか思い出す。実際に足りなかったのだ。2/6ふたりが。

    「遅い。」

    銀と水色の髪をした彼は少しだけ不機嫌そうに吐き捨てた。

    「すまないな、私を見るまでぼくが6/6ろくにんだということも思い出せなくて。」
    「ずっと4/6よにんで生きて行く事になってたかもしれないのに、あまり焦ってるようには見えないな。」

    分かたれた自分は拗ねているようで、不満げに言葉を投げかける。それはそうだ。オレだっていつもいるはずの何かが消えて私の事を思い出してくれない、なんて事になったら寂しくて仕方が無い。

    「今ようやくぼくが4/6よにんじゃ成り立たない事を自覚できたところだからね。だからほら、へそを曲げてないで混ざり合ってくれないか。」

    そう言って自分の体へ手を伸ばす。抱き合ってほしいと言うように腕を広げてみせた。

    「……誠意を示して。」
    「……誠意か。」
    「そう。僕達を忘れてすみませんって。2週間も忘れていたのだからきちんとしてくれないと戻るのも難しい。」

    これは事実で、オレは精神のバランスが取れていないと体調を崩してしまう。病は気からと言うが、本当に気が体の調子に深く影響するのだから気をつけるしかない。
    今回は寂しい思いをさせてしまったから、それを埋めるだけの融けるような甘やかしが必要だろう。

    「すまないな、ぼくを忘れてしまって。私が望むだけこうして抱きしめてやるから、機嫌を直してくれるかな。」

    優しく抱きしめながら頭を撫でると、それで正解だったのか、ゆっくりと息を吐き出してから同じように背中へと手を回してきた。

    「俺がどれだけ不安だったかわかっているんだろうね?」

    ぎゅう、と強く抱きしめられる。

    「わかっているさ。」
    「晩御飯も僕の好きな物を用意してくれないと許さないからね。」
    「勿論だ。」

    何度も何度も頭と背を撫でてあやしてやりながら応えていく。2/6ふたりは寂しさからか、1人ろくにんの時と比べて随分と子供っぽい性格になってしまったようだが、それでも愛おしかった。
    薄い色の髪に指を通し、さらりと流す。
    何故自分が2つに分かたれてしまったのか、何故オレを忘れてしまっていたのか。
    謎はまだ残るものの、今はただ私を甘やかし慰める事に集中したかった。

    「………もう、大丈夫。」

    ぼくはオレの肩から顔を上げ、目の縁が赤くなっていても、なんでもないかのように振る舞う。

    「準備はできた?」
    「勿論。」

    支度済の言葉を得られたので、その輪郭に指を沿わせてなぞる。そのまま顔を近づけ、軽く口付けを落とした。
    ちゅ、ちゅっ、と啄むように何度も唇を重ねて、舌でこじ開けるように割り開く。
    熱い唾液が混ざれば、触れた場所から融けてだんだんと1つになってゆく。文字通り。
    もうキスどころではないくらいに一体化して、昂ぶった体を鎮めるために深呼吸をする。冷たい空気が肺を通って頭を冷やした。

    ポケットからスマートフォンを出してインカメラで俺を見ると、ちゃんとカラフルな髪色が6/6ろくにんであることを示してくれる。

    「今日はハヤシライスだな。」

    そう呟いて僕はその場を後にした。



    ――――――

    正直言って、よくわからないというのが本音だった。以前キミをネタに小説を書きたいと言われた時はどんな作品になるのか楽しみにしていたものだけれど、まさか6重人格?として登場させられるとは。作家というのは変人が多いのだろうか。
    も美術部の一員ではあるが、正直なんのコンクールにも出ていない、むしろほとんど幽霊部員と化している今現在では作家の考えていることは何も分からなかった。

    「君には自分がこういうふうに見えているの?」
    「まさか!フィクションだよ。キミのその[*¹]色の髪を見て思ったんだ、普通の高校生が集合精神ハイブマインドだったらって。」
    「[*¹]色って……これくらい何処にでもいるよ。」

    彼はオレぼくの事を特別な何かだと思っているらしく、時折変な妄想を自分に吹き込んでくる。ぼくオレにはその気持ちがよくわからなかったが、それでも彼が満足するならと付き合ってあげる事にしている。

    「本当に特別なんだよ?」
    「ああはいはい。」

    これ以上聞いて、彼の言葉を信じると何かの教祖にでもされてしまいそうだ。
    もう書かせるのをやめたほうがの精神安定のためになるかもしれないとは思いつつも、せっかくできた友人を、それがあまりに胡散臭くても見捨てることはできなかった。
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