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    石砂糖

    @sugarstone_07
    石砂糖です
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    石砂糖

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    ラズアルのはなし
    いろいろ設定はあるんだけどそれの伏線貼り貼りSSみたいなかんじ ここからなんか起こりそうだけどなんもない 尻切れトンボ

    「サキュバス?」
    「そう。まあインキュバスと同一存在だから、夢魔ってまとめて呼んだほうがいいのかもしれないけど。」

    サキュバスのほうが図鑑の記述多いんだよね。と長い丈の外套を着た男は続ける。
    男が作業していたであろう机の上には、夢魔のジェムと剥ぎ取った体の一部が散乱していた。

    「で、もう少しで固有の【魅了】をスクロールにできそうだからさ。出来たら君に使ってもいいかな。」

    "君"と呼ばれた軽装の男、コールは顔を顰める。
    これは実験台になってくれというお願いだった。もっとも、この実験をコールはそうそう拒否できない。
    混沌の産物であるダンジョン。そこに出現する魔物からのみ手に入るジェムを研究できる人材は少ない。
    この机を散らかし放題にしている男、ヴァイドも貴重な人材の一人だ。

    「治験者は雇わなくていいのか。」
    「今回は内容が内容だからね。でもまあ2回くらいは人体で試しておきたいし、個人的な興味もあるからさ。」

    ヴァイドは人好きのする笑みを浮かべる。だがその笑顔の裏にはたいてい碌でもない考えが潜んでいることを、軽装の男はよく知っていた。
    2回、と彼が言ったのはコールで1回、ヴァイド自身で1回、という意味だ。しかし、実験がたった1回で済むはずがないのは、二人共よく知っている。だから試す、だ。
    固有魔術が使えそうならもう一度、危険であればその研究は凍結される。
    この二人しかいない研究室の取り決めだった。

    替えがきかない人材だからこそ大切にしなければならない。本当なら二人で済ませるようなものではないのだが、ヴァイドが知らない人物を酷くを嫌うから、なんとか融通してもらっている状態だ。

    「……わかった。他に必要なものはあるか?」
    「あ、ジェムあと2,3個欲しいかも。あとファイアリザードの皮とトレントのジェムとミュエルリングと――」
    「待て待て待て、そんなに一気に言われても覚えられん。」

    ため息を飲み込んで承諾したところに降り注ぐ"お願い"の雨。コールが慌てて制止すると、ぴらりと1枚の紙が差し出される。
    内容の前半はさっき言っていたものだ。
    インクが乾ききったそのメモは、最初からこれを頼むつもりだったという魂胆が透けて見える。

    「これなら覚えなくて済むでしょ。」
    「それにしても量が多すぎだ。」

    バカ。と罵りたくなる気持ちを抑えながら、コールはメモを受け取った。


    ◆◆◆
    倒した魔物たちが戦利品を残して宙へ消え去っていく。それを見届けてから、コールは一息ついた。
    "おつかい"は粗方済んだが、残り一つが手に入らない。ここで何日も粘るより街へ行って買ってくる方が早いだろうと判断して、彼は踵を返した。
    ダンジョンの一室、魔物の出ない安全地帯に戻ったコールは、鞄から1枚の紙を取り出す。
    呪文が書かれたそれに魔力を流し込むと、一瞬にしてコールの姿はダンジョンから消え去った。
    量産された【転移】のスクロール。特に屋外へと移動する事に特化したそれは、ダンジョンから抜け出すのによく使われる。
    市販のものは少し値が張るが、コールはそれを惜しげもなく使う。理由はヴァイドがそれを量産できるからだ。
    効率化が趣味だと揶揄されるコールは、アイテムを使う判断も迅速だ。ここで残りの品を粘らなかったのも、それが理由だった。

    ダンジョンの外に出た瞬間、陽光を浴びたコールは思わず目を細めた。
    ダンジョンの中は常に薄暗いから目が慣れてしまうと、外に出たときに刺す光の眩しさが堪えるのだ。
    2日程だろうか、ダンジョン内にいたのは。
    早く帰らなければヴァイドが拗ねるかもしれない。ただでさえおつかいの品を不足させた状態で戻ってきたのだから、その注文も早いところ済ませなければ。
    振り返れば青空に似合わない、真っ黒な城が聳え立っている。
    コールはそれを一瞥して、帰路についた。

    ◆◆◆

    ダンジョンから少し歩いた所にある小さな一軒家。静かな森の奥に位置するその家は、様々な事情を抱えた二人が住む為の秘密の安息所だ。
    コールがドアを開けて声を掛けようとすると、それよりも先に中から大声が聞こえてくる。

    「コール!いい所に!」

    彼の目に飛び込んできたのは見たことのないウィスプと、それを魔法で押し留めるヴァイドの姿だった。

    「そこの空のジェム投げて!」

    こちらを見向きもせず彼は叫ぶ。
    コールはその状況を理解したのか、机の上に散乱した空のジェムを1つ掴んで迷う事なくウィスプへと投げつける。
    空のジェムはウィスプの手前で不自然なほどピタリと止まって、それを吸収し始める。
    ウィスプは体を大きく動かし逃げようとするが、ヴァイドの魔法の前ではそれも叶わない。
    やがてジェムはウィスプを全て吸収し終え、後には中の詰まったジェムだけが残った。

    「……なんだ今のは。」
    「ジェム自体をスクロールに転写しようと思ったら失敗してあれが出た。」

    あっけらかんと答える彼にコールは心の中で頭を抱えた。

    「あれはジェムから生まれたしジェム・ウィスプと名付けよう。空のジェムで回収できたということは殆どが呪文、もしくはスキル情報でいいのだろうか。ジェム自体に元々のモンスター情報はないのかな?」

    床に落ちたジェムを拾いながらぶつぶつと呟くヴァイドの声を聞き流しながら、コールは散らかった机の上を片付け始めた。
    ◆◆◆
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