・時々冷蔵庫から取り出して混ぜ合わせる甘い。ただ甘い。バニラの香りとミルクと砂糖の味。
これは彼がさっきまでアイスを食べていたから感じるものだ。逆に彼は、俺がさっきまで飲んでいたストレートティーの味がするのだろうか。
ここまで密着しなければ感じることは無かったであろう人の熱を感じ、混ぜ合わせ、溶けていくのを受けて入れている。
彼の頭に手を添えて、つるつるとしたエナメルに舌を這わせる。
彼が少し、身じろぎしたのがわかった。こうして自分から甘えるようなアプローチをするなんて、いつもは恥ずかしくてできないのだが、今日は何故かできてしまった。
アイスクリームの甘さに、酔ってしまったのかもしれない。
どきどきと鼓動が跳ねる。体が熱を持って、彼しか感じられなくなっていく。
「ん、ぅ……」
「っは、ぁ……」
彼もまた、私と同じように熱に浮かされているのが伝わってくる。
このまま溶けて、混ざり合ってしまえそうだ。
そうして一つになった僕らの溶液を冷やして凍らせた時、生まれたものはアイスクリームたり得るだろうか。
分離して先に水だけ凍ってしまった、不格好な2色の氷となってしまうのだろうか。
「ふぅ……」
「ぁ、はぁ……」
彼が顔を離す。私も名残惜しく感じながら彼から離れる。
粘度を持った唾液の糸が、2人を繋いで、切れた。
「今日は積極的だね。」
「そういう気分、だから。」
彼の白いさらさらとした髪に指を絡ませながら、小声で伝える。
彼はうつくしいかおで微笑むと、オレの体をぎゅう、と抱きしめて密着した。
「じゃあ、もっとあつくなること、してもいいかい?」
「……うん。」
今すぐに冷やして固めるより、水分がいくらか飛ぶまで煮詰めたほうが、何もしないよりかうまく固まる。
もう一度交わした深い口づけに身を震わせ、離れたあとはあつい吐息を吐く。
「ふゆ、はやく……」
僕自身溶けてしまっているのがわかる。
茹だった頭では冷静な思考なんてできない。
できるのはこの熱を、彼に伝えてしまうことだけ。
体を預けるように、自分より少し小さい彼に身を任せる。
シャツの下を這う彼の指は、少し冷たかった。