獣に飼われるならあなたに 「お久しぶりですねぇ、園田さん」
「飯田さん、ご無沙汰しています。いきなりの連絡でしたのにありがとうございます」
「いやいや、今時画廊の店主なんて暇なもんですよ」
にこにこと、人の良い笑顔でソファへすすめる画廊の主人、飯田に、僕は久方ぶりに会えた、という以上の感慨を覚えた。
この人は金持ち喧嘩せずを体現したような人物で、画廊に飾られている作品も優しい、朗らかな作品が多い。
昔はこういう作品に対して興味をあまり持てず、市場の価値しか見出せなかった。そして飯田はそんな自分を見抜いていたが、何も言わずに笑って作者や作品の来歴を語ってくれた。
「これ、新しい名刺です」
「ありがとうございます。おや、フリーではなくなったんですね。なんだか雰囲気も柔らかくなりましたか」
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