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    8u_877

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    8u_877

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    終わらんから一旦出す!!!!!!!
    ショウの話!!!!!!

     目覚めて、いろいろなことが脳内を駆け巡る。そうでなくても脱水症状で割れそうな頭に追い討ちをかけるのは、覚えている限り最新の記憶。
    「信じるなっつったろ、馬鹿」
     彼は、白波の立つ恐ろしげな海に私を投げ捨てるとき、これまでにないほどの嘲笑を見せた。常々、彼には勝てないと感じていた。私は、瞬く間に手足を縛られたことにすら抵抗できず、ただされるがままだった。気取られぬ技術もそうだろう。しかしやはり心理的に、彼には裏切られぬという慢心、自らの落ち度だ。
     自らの落ち度、はじめて彼に会ったときにもそうだった。

    「暗い顔してんなあ、若いの」
     もう十五年近く前になるだろうか。ルルビナへの留学は、あまりたのしいものではなかった。当然、終戦記念の文化交流使節、パジ国の代表として行くのだから、すべてがたのしいはずがない。しかしあの扱いはどうかと、当時は、彼と出会うまではそう思っていた。毎夜とまではいかずとも度々開かれる交流を目的とした宴会では、私は事実上客であるにもかかわらず、酌のように要人に酒を注ぎただ笑うだけで、談笑にすら入れてもらえないことを悔しく思っていた。当時、私はものを学びたかった。パジの使節と、ルルビナの政治家、軍人、資本家など権力を持った者が一挙に集まる宴会で、笑うだけの物言わぬ召使いに徹するのは明らかに時間の無駄、そのときはひたすらにそう思われた。私は、私がそこに居る意味が欲しかった。
     いつかの宴会、あまりの気苦労に悩まされ、宴会場の端の方でぼうっと突っ立って休んでいたとき、彼は話しかけてきた。ものを学びたい、権力者と知的で有益な話をしたいとは思いつつも、結局そのころの私は若輩で、わざわざ話しかける者などいるはずがないと思っていたために、はじめはひどく驚いたものだ。あっと声をあげてしまい、慌てて非礼を詫びた覚えがある。
    「パジの使節のタバタです。たのしい宴会の邪魔でした、ごめんなさい」
     深く礼をしてから、間違えたと後悔する。ルルビナに礼の文化はない。そんな様子のパジ人を見てルルビナ人は笑うとも聞く。案の定彼は豪快に声をあげて笑った。その笑いすらも宴会の喧騒に溶けてしまう。
    「なにも、そんなに気にすることじゃないさ」
     ふっと頭を上げて彼を見る。深いほりの影になっても鋭く光る琥珀色の瞳、短く整えられた明るい金髪。太い眉や骨張った輪郭、広い肩幅、上背のあるがっしりとした体つきなど、力強い印象が持たれる。
    「ルルビナ連邦国軍第五旅団長シュッツだ」
     思っていたよりもはるかに階級が上だったので、興奮すると同時に少し怖気付く。その気持ちは伝わらないようで、気さくに握手を求められ、大きな硬い手を握る。握り返す力は限りなく強く、腕をピンと張ってしまう。
    「おっと、失礼。痛かったな」
     握る手は緩められた。
    「いえ、大丈夫です」
     自由になった腕ごと体の後ろに回し、悟られないよう少しだけ振って痛みを逃す。
    「それより、御用ですか。私の知る限り、あなた……シュッツさんはパジ使節との宴会にいらしたのははじめてですよね」
    「ふん、顔を覚えてるのか。どうりで変な目線だ」
     はっとした。酌をしている間も、こうして酌から逃げてからもずっと、ルルビナの有力者の観察をしていた。言い当てられたことよりも、目線について言及されたことに驚いたのだ。
    「あなたは、話しかけるまで、私の方を、一度も見てない……どうして、軍人は皆そう、なんですか。皆気取られないで、人を見る、のができるんですか。どうしたらそんな、そんな技術を得られますか」
     驚きを隠さず吃りながら質問攻めする姿はどんなに滑稽だったろうか。しかし彼にははぐらかされてしまった。
    「んん、それについてはノーコメント。まあ、あんまりやると、怪しまれるぞ」
     途端に我に返る。一度深呼吸をすれば、もう落ち着いてしまった。シュッツは、会場をあてもなく周っている本物の店員を呼び止め、酒を一杯頼んだ。
    「なにか飲むか」
    「結構です。飲めないので」
     店員を帰してから、彼はそばのソファへと促した。
    「若いとは思ったが。こっちじゃ果実酒なら十六から飲めるが、いいのか。郷に入っては郷に従えって言うじゃないか」
     その言い分は確かである。当時は、パジでは飲めず、ルルビナでなら飲酒可能年齢だったが。
    「いえ、体質です。酔いやすいんですよ」
    「へえへえ、宴会で醜態を晒すわけにはいかんもんですな」
     それ以上彼は、酒を勧めることはなかった。戻ってきた店員からグラスを受け取り、彼はソファに体を委ねる。
    「ことばは、どうやって習った」
     流れではじまってしまった会話、乗るか反るか迷った挙句、口を開く。
    「ほぼ独学です」
    「本じゃあるまい」
     この人は、私のどういうところを見てそのように言い当てられるのだろうと、ずっと勘繰っていた。しかし私も、今では造作なくなってしまったのは彼のおかげだ。
    「……ルルビナの人と話す機会があって。なんでわかったんですか」
    「他言語を本で学べば、文法なんかもするから書きことばに近くなるが、お前は全部話しことばだ」
     曖昧に相槌を打つ。
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    8u_877

    DOODLE終わらんから一旦出す!!!!!!!
    ショウの話!!!!!!
     目覚めて、いろいろなことが脳内を駆け巡る。そうでなくても脱水症状で割れそうな頭に追い討ちをかけるのは、覚えている限り最新の記憶。
    「信じるなっつったろ、馬鹿」
     彼は、白波の立つ恐ろしげな海に私を投げ捨てるとき、これまでにないほどの嘲笑を見せた。常々、彼には勝てないと感じていた。私は、瞬く間に手足を縛られたことにすら抵抗できず、ただされるがままだった。気取られぬ技術もそうだろう。しかしやはり心理的に、彼には裏切られぬという慢心、自らの落ち度だ。
     自らの落ち度、はじめて彼に会ったときにもそうだった。

    「暗い顔してんなあ、若いの」
     もう十五年近く前になるだろうか。ルルビナへの留学は、あまりたのしいものではなかった。当然、終戦記念の文化交流使節、パジ国の代表として行くのだから、すべてがたのしいはずがない。しかしあの扱いはどうかと、当時は、彼と出会うまではそう思っていた。毎夜とまではいかずとも度々開かれる交流を目的とした宴会では、私は事実上客であるにもかかわらず、酌のように要人に酒を注ぎただ笑うだけで、談笑にすら入れてもらえないことを悔しく思っていた。当時、私はものを学びたかった。パジの使節と、ルルビナの政治家、軍人、資本家など権力を持った者が一挙に集まる宴会で、笑うだけの物言わぬ召使いに徹するのは明らかに時間の無駄、そのときはひたすらにそう思われた。私は、私がそこに居る意味が欲しかった。
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