赤くて、つやつやとしていて、ころんと丸い形状。たいして腹を空かせていたわけではないが、思わず手が伸びてしまった。
「見たことない果物だな」
テーブルの上で無造作に転がっていたそれを手にすると、収穫した野菜の根を取っていたオロルンが嬉しげに顔を上げた。
「ああ、つい最近品種改良に成功した実なんだ」
「へえ、すごいな」
深くうなずきながら言うと、カクークも俺の頭の上で「マジかよ、きょうだい!」と感嘆の声をあげた。
急にまた配達を頼んできたかと思えば、これを自慢したかったのか。
オロルンの作る野菜や果物は、ナタでも格別の出来だ。作物をどうすればより大きく、より甘くできるか。生命の根源ともよべるものを感じ取るその特性から、掛け合わせる品種選びの勘もずば抜けている。農地栽培を生き甲斐としているこの友人の努力は底が知れない。
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