尻尾俺は寝付きが悪い。
今になって始まったことじゃないから、最近は悩むこともあまりない。
外灯が部屋を薄ぼんやりと照らす。通り沿いの部屋はうるさい分安い。
ベッドに入ってしばらく経つ。酔っ払って通りを歩く賑やかな人波は少しずつ途切れていく。
朝練があった頃は「なんでこんなに疲れてんのに寝れねえンだ、チクショウ」と思ったこともあったけど、今はただ眠りの尻尾が見えたらゆらゆらと揺れるそれを上手く掴むことだけを考える。
通りが少しずつ静かになっていく。仰向けになって天井を見ながら、こうやって昔も天井を見てたなァ、と、そんなことを思い出したのは大学進学のためにひとり暮らしを始めてからだった。
静かな部屋は生き物の気配がなく、高校時代のいつもうるさかった寮生活からの反動も大きいのかもしれない。
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