ハイタッチ ついに、WRGP決勝を迎えた。僕たちにとっての、最後の戦いだ。
相手は、チーム5D'sの不動遊星とクロウ・ホーガンだ。ルチアーノがずっと前から敵対視している、シグナーたちだった。
シグナーは、強力なカードを使ってくる。中でも、ミラーフォースには苦戦させられたことが何度もあった。
マジック、トラップの対策。それが、僕がルチアーノと勝ち抜くために取った作戦だった。機皇帝はシンクロに対して強力な力を持っているが、妨害に弱い。弱点を補強する必要があったのだ。
予想通り、チーム5D'sはシンクロを狙ってきた。僕たちはそれを阻止する。僕たちが攻めると、今度はチーム5D'sが阻止してくる。一進一退の展開だった。
先に仕掛けたのは、ルチアーノだった。
「スカイコアを召喚! トラップ発動! 激流葬!」
お決まりのコンボで、スキエルを召喚する。
「機皇帝スキエルで、ダイレクトアタック!」
高らかに宣言し、攻撃を通す。いいスタートだった。
「ターンエンド」
ルチアーノが余裕綽々に言う。
「俺のターン、ドロー!」
遊星がターンを受け取る。なんとか状況を打開しようとするが、シンクロを封じられ、リソースを失くした現状では、うまくいかないらしい。それでも、攻撃力2500の上級モンスターを召喚した。
「モンスターで攻撃!」
遊星が宣言するが、それは無意味なことだった。
「スキエルGの効果発動!」
スキエルによって、攻撃は止まってしまう。
「……ターンエンド」
なす術もなく、遊星はエンドを宣言した。
「僕のターン」
カードをドローして、フィールドを見る。フィールドを埋めるのは、ルチアーノのスキエルだ。相手フィールドには、攻撃力2500の効果モンスターと、伏せカードが一枚。
「手札から、収縮を発動!」
相手モンスターの攻撃力に半減する。これで、壁になるものはなくなった。
「機皇帝スキエルで攻撃!」
宣言すると、相手モンスターはあっさり破壊された。
次のターンに、必ずクロウはディスティニードローを使うだろう。ミラーフォースを使われたら、僕たちは逆転されかねない。
でも、僕には秘策があった。ずっと温存していた、僕たちのキーカードだ。
「カードをセット」
僕は、カードを一枚伏せる。スキエルを守るためのトラップだ。
「ターンエンド」
エンドを宣言し、ターンを回す。さあ、どう出るか。緊張しながら見守る。
「守らなきゃいけねぇ笑顔が……あるんだよ!」
クロウが、自分自身に言い聞かせるように呟いた。
「ドロー!」
デュエルディスクからカードを引き抜く。ディスティニードローだった。
「カードをセット」
クロウは、カードを伏せた。僕には、それがミラーフォースであるという確信があった。
「…………ターンエンド」
クロウが悔しそうに告げる。本心なのか、僕たちを誘うための演技なのかは、よく分からなかった。
「僕のターン! ドロー!」
ルチアーノが高らかに宣言する。勝利を目前にして、その声は歓喜に満ちていた。
僕に視線を向けて、にやりと笑う。ちゃんと、僕の意志は伝わっている。あとは、止めを刺すだけだ。
「機皇帝スキエルで、ダイレクトアタックだぁ!」
ルチアーノが楽しげに攻撃を宣言する。これが通れば、僕たちの勝ちだった。
クロウが、にやりと笑った。フィールドのカードへと手を伸ばす。
「リバースカードだ!」
伏せていたカードがひっくり返される。それは、予想通りミラーフォースだった。
それを見て、ルチアーノが笑い声を上げた。楽しそうに、そして、狂ったように笑う。
「リバースカード、オーープン! トラップだぁ!」
高らかに宣言すると、伏せていたカード…………誤作動を発動させる。
「へへへっ」
楽しそうに笑いながら、コストを支払う。ミラーフォースがひっくり返り、元に戻った。
「なに!?」
クロウの表情が変わる。
「いけ! 機皇帝スキエルで、ダイレクトアタック!」
シンクロモンスターを吸収したスキエルが、クロウを攻撃する。襲いかかる衝撃に、数歩後ずさった。
システムが音を立て、ライフ0の表示を示す。僕たちの勝利だった。
「やったぁ!」
僕が思わず手のひらを差し出すと、ルチアーノもそれに応じた。パチン!と、手のひらのぶつかる音が響く。
自分の行動に気づいたのか、ルチアーノが頬を染めた。
「別に、これくらい当然だよ」
でも、その声は嬉しそうだ。
僕たちは、チーム5D'sに勝利した。それは、ルチアーノの悲願が叶ったことを意味していた。これから、何が起きるのか。それは、ルチアーノしか知らないことだった。