着せ替えゲーム ルチアーノが部屋から出ていったことを確認すると、僕はゆっくりとソファから立ち上がった。リビングと廊下の境目から顔を出すと、息を潜めて洗面所の様子を窺う。精一杯耳を澄ませると、廊下の先からは物音が聞こえてきた。浴室の扉が閉まる音を確認すると、僕は足音を立てないように自室へと向かう。
迷うことなく押し入れの扉を開くと、隅に置かれていた棚に手を伸ばした。ポケットから鍵を引っ張り出すと、鍵のついた引き出しに差し込む。引き出しの奥深くに収まっていたのは、最近発売されたばかりの着せ替えゲームだ。丁寧にパッケージからソフトを出すと、手元に用意していたゲーム機にセットする。
電源を入れてソフトを起動すると、賑やかなタイトル画面が表示された。ボタンを押してメニュー画面を開くと、そこにはプレイヤーの分身となる主人公が現れる。僕の画面に映し出されているのは、赤い髪と緑の瞳を持つ小学生くらいの少女だった。知り合いなら誰もが分かるくらいの、ルチアーノによく似た姿である。
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