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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    制服デートをするTF主ルチのお話です。ジュースを飲んだりゲーセンに行ったりプリクラを撮ったりします。

    制服 その日、僕の前に現れたルチアーノは、いつもと違う格好をしていた。ルチアーノであることは一目で分かるのだが、雰囲気や服装が全く違うのだ。うっすらとメイクを施した顔は普段よりもシャープで、男の子らしい印象を与えてくれる。髪の色はブラウンレッドに染められ、左側で三つ編みにされていた。身に纏っている服は、龍亞と同じアカデミアの制服だった。
    「どうしたの? その格好」
     僕が尋ねると、ルチアーノはにやりと笑った。嬉しそうに両手を広げ、くるりと一回転して見せる。
    「これかい。アカデミアの制服だよ。『死体を隠すなら死体の中に』って言うだろ」
     妙な例えを使っているが、要するに、アカデミアに潜入していたらしい。確かに、学校の中に潜り込むなら彼が適任だった。
    「それで、今日はどうしたの? もうずいぶん遅いけど」
     僕は時計を見る。モニターは、三時半を示していた。町の中には、ちらほらと制服姿の子供の姿が見える。ルチアーノも学校帰りなのだろう。
    「君が暇してるんじゃないかと思って、会いに来てやったのさ。一人だったってことは、相手がいなかったんだろ? 感謝してくれよな」
     彼は自信満々に言う。本当は暇ではなかったし、さっきまで遊星と一緒にいたのだけど、ルチアーノを怒らせそうだから言わないでおく。
     おそらく、彼は制服姿を見せつけに来たのだろう。僕の反応を見て楽しんでいるのだ。もしかしたら、褒めてほしかったのかもしれない。
    「急ぎの用事はないけど、どこかに行きたいの?」
     尋ねると、ルチアーノはにやりと笑った。顔を近づけると、内緒話をするような小声で言う。
    「デートしようぜ。制服デートってやつだ」
    「デっ…………!」
     叫びそうになって、ルチアーノに口を塞がれた。手のひらの奥で、もごもごと言葉を飲み込む
    「声がでかいよ」
     咎めるように言いながらも、彼はご機嫌な様子で僕の隣に寄り添った。からかうように笑いながら、僕の左腕に抱きつく。
     僕はどぎまぎしてしまった。夕方に近づいた町の中で、制服姿の男の子に抱きつかれているのだ。いけない取引をしているように見えないかと心配になってしまう。
    「じゃあ、行こうぜ」
     そう言うと、彼は僕の腕を引っ張った。ぐいぐいと引っ張られながら、仕方なく町の中を歩き始めた。

     ルチアーノが向かった先は、シティ繁華街だった。腕組みはすぐに飽きてしまったようで、今では普通に手を繋いでいる。
     シチュエーションというものは不思議だ。いつもと変わらないお出かけなのに、相手が制服姿というだけでドキドキしてしまう。それに、ルチアーノはこれを『デート』だと言ったのだ。言葉のせいで余計に意識してしまう。
    「それで、今日はどこに行くの?」
     尋ねると、ルチアーノは不思議そうな顔をした。僅かに首を傾げると、当然のように言う。
    「それは、君が決めるんだろ?」
    「えっ?」
     驚いて声を上げると、彼はにやりと笑った。からかうように笑って、言葉を続ける。
    「デートっていうのは、年上がエスコートするものなんだろ? ちゃんとエスコートしてくれよ」
     無茶ぶりだった。僕には、デートのプランなんて分からない。そもそも、デートをしようと言ったのはルチアーノの方なのだ。
    「そんなこと言われても、行き先なんて決まってないよ。デートしたいって言ったのはルチアーノでしょ?」
    「僕は、デートしたいなんて言ってないよ。君が寂しそうだから誘ってやっただけさ」
     ルチアーノは強情に言う。どうしても、僕が決めるしかなさそうだった。
     デートとは、いったい何をするものなのだろう。これまでに、そんな経験はしたことがない。何も思い付かなかった。
     困って、町の中を見渡す。町を行くカップルたちの行き先を見て、デートスポットを探せないかと思ったのだ。
     僕の目論みは当たった。少し離れたところに、キッチンカーがあるのを見つけたのだ。流行りのお店らしく、若い女の子や制服姿のカップルが列を作っている。車体のデザインや、若者の受け取ったカップから察するに、フルーツジュースを売っているらしい。
    「あのお店に並んでみない?」
     声をかけると、ルチアーノはまじまじとキッチンカーを眺めた。フルーツの模様を見ると、妥協したように頷く。
    「いいよ。付き合ってやる」
     ルチアーノの手を引いて、キッチンカーの列に並ぶ。制服の若者の中に紛れると、自分も学生になったような気分がする。こっちに来てからは、学校というものとは無縁だったのだ。
     ルチアーノは興味深そうにキッチンカーを眺めていた。そういえば、ジュースを販売するキッチンカーに並ぶのは初めてかもしれない。権力者であるルチアーノは、庶民の文化など知らないのだろう。
     お店は、若い女性が運営していた。注文を聞くと、手早くジュースを注いで手渡してくれる。メニューの看板を眺めていたら、あっという間に順番が来た。
     ルチアーノはぶどうジュースを注文した。僕は、キウイのジュースを選ぶ。本当はいちごが良かったのだけど、ルチアーノが嫌がりそうだったから妥協したのだ。
     女性はにこやかにジュースを渡してくれる。お礼を言って受け取ると、ルチアーノを近くのベンチに誘導した。
    「これが、君の思うデートなのかい?」
     ルチアーノがにやにやと笑いながら僕を見る。なんだか、試されているような気分になって、緊張してしまう。
    「若い子が並んでたから、真似してみたんだよ」
     そう言って、僕はストローに口をつけた。無添加のフルーツジュースは、甘くてやさしい味がした。
     カップルらしいこととはどのようなことなのだろう。そう考えた時、不意にひとつのアイデアが浮かんだ。
    「ねえ、ルチアーノ。こっちも一口飲んでみない?」
     声をかけながら、自分の注文したジュースを差し出す。ルチアーノは、怪訝そうな顔をした。
    「嫌だよ。わざわざ人からもらうことないだろ」
    「そんなこと言わないでよ。カップルって、こういうことをするものなんだから」
     そう言うと、ルチアーノは怪訝そうに僕を見た。僕の言葉を疑っているようだ。
    「ほんとかよ」
     疑いながらも、僕のジュースを手に取る。ストローを咥えると、中身を啜った。
    「そっちも、味見させて」
     そう言うと、嫌そうな顔でジュースを差し出した。受け取って、そっと口をつける。所謂、間接キスだ。
     ぶどうのジュースは、キウイよりも甘かった。甘いものが苦手なルチアーノには、口に合わないかもしれない。
    「本当にこんなことするのかよ。デートってやつは」
     文句を言いながら、ルチアーノはちびちびとジュースを口に運ぶ。小動物のようでかわいかった。
     僕がジュースを飲み終えても、ルチアーノは半分ほどしか減っていなかった。カップを持ったまま、席を立って手を繋ぐ。
     僕には、次の行き先のアイデアなんてなかった。手を繋いだまま、当てもなく繁華街を進んでいく。町の中に並ぶのは、色とりどりの看板を掲げたビルばかりだ。
     こういうときに、お店の知識が試されるのだ。カードショップの場所なら分かるのだけど、デュエルを始めてしまったら、いつものお出掛けと変わらない。それに、今日のルチアーノは制服姿なのだ。いつものようなデュエルはできないだろう。
     僕が悩んでいると、どこからか賑やかな音声が聞こえてきた。視線を向けると、少し先に大型のゲームセンターが建っている。人が出入りする度に、ドアから音声が漏れた。
    「そうだ。ゲームしようよ」
     ゲームセンターを示しながら、ルチアーノの手を引っ張る。
    「ゲーム? まあ、いいけど」
     まんざらでも無さそうな顔で、彼は僕の後をついてきた。それもそのはずだ。彼は、ゲームが大好きなのだから。
     店内に入ると、賑やかな音楽が聞こえてきた。ずらりと並んだクレーンゲームが、各々の設定された音楽を再生している。中身は、モンスターのフィギュアやぬいぐるみが飾られていた。その中に、ひとつ気になるものを見つけて、ルチアーノの手を引っ張る。
    「見て、これ。スケープ・ゴートだって」
     ショーケースの中には羊のぬいぐるみが並んでいた。赤と青の羊がクッション材の上に転がり、壁際のストックには四色の羊がぎゅうぎゅう詰めにされている。
     ルチアーノはガラスの中の羊を覗き込んだ。僕の顔と羊のぬいぐるみを交互に見て、にやりと笑う。
    「君、こんなのが好きなのかい?」
    「かわいいなって思うよ。取ってみようか」
     僕は、財布から百円玉を取り出すと、挿入口に押し込んだ。チャリンと音がして、軽快な音楽が流れる。
     アームを動かすと、赤い羊に狙いを定めた。ボタンを操作し、アームを下ろす。アームは、羊のお腹にぶつかると、跳ね返るように戻った。
    「ひひっ。下手くそだな。突き刺さってたぜ」
     ルチアーノがおかしそうに笑う。僕は二枚目の百円玉を押し込むと、再びアームを動かした。狙いを定めて、アームを下ろす。今度は、羊を挟むようにアームが下りた。
    「よしっ!」
     アームは羊を挟んで、少しだけ持ち上げた。そのまま、するりと間を滑って落ちてしまう。
    「あぁっ!」
     僕が声を上げると、ルチアーノは楽しそうに笑う。
    「それ、取ってやろうか?」
     自信満々の態度だった。疑問に思って尋ねる。
    「ルチアーノ、クレーンゲームできるの?」
    「所詮ゲームだろ。僕にできないわけがないね」
     そう答えると、僕を押し退けてボタンの前に立つ。お手並み拝見という気持ちで、百円玉を入れた。
     ルチアーノはボタンを押してアームを動かした。やっぱりゲームは得意なようで、的確に羊の真上を狙った。自信満々な顔をしながら、アームを下ろす。
     アームは羊をしっかりと挟み込んだ。ゆらゆらと揺れながら羊を持ち上げる。
    「上がった!」
     僕が言うと、ルチアーノは嬉しそうに笑う。
    「言っただろ。取ってやるって」
     羊を抱えたアームは出口へと向かって動き始める。その振動で、羊が滑り落ちてしまった。
    「あぁっ!」
     僕が声を上げると、ルチアーノは悔しそうに顔を歪めた。僕に視線を移すと、抗議するように言う。
    「今のは無しだ! もう一回」
     新しく百円玉を出そうとするが、財布の中の百円は使い果たしていた。両替するしかない。
    「両替してくるから、ちょっと待っててね」
    「とっとと行ってこいよ」
     ルチアーノに急かされながら、駆け足で両替機に向かう。両手いっぱいに小銭を抱えると、筐体へと戻った。
    「次は取るからな」
     ルチアーノは百円玉を引ったくると、筐体へと押し込んだ。真剣な顔でボタンに触れる。
     彼の操作は的確だった。しっかりとぬいぐるみを挟み、しっかりと持ち上げる。しかし、移動の振動で滑り落ちてしまうのだ。
    「なんだよ!」
     ルチアーノはむきになって百円を注ぎ込む。ここまでゲームに苦戦している姿を見るのは初めてだ。機械の知能を持つルチアーノは、大抵のゲームを簡単にクリアしてしまう。なんだか新鮮な気分だった。
     千円ほど注ぎ込んだところで、ついにその時がやってきた。アームが、がっしりと羊のぬいぐるみを掴んだのだ。ゆっくりと持ち上がり、がくがくと揺れながら移動する。振動にゆらゆらと揺れながらも、アームはしっかりと羊を抱き締めていた。焦れるようなゆったりした動きで、取り出し口へと移動していく。
    「やった」
     ルチアーノが、小さな声で呟いた。その表情は、嬉しそうに笑っている。まるで、年相応の子供のようだ。
     アームが、両腕を離した。羊がころんと転がって、取り出し口に姿を現す。ルチアーノは羊を拾い上げると、どや顔で僕に差し出した。
    「ほら、取ってやったぜ」
     結構苦戦してたけどね。そんな言葉が喉元まで浮かび上がるが、飲み込んだ。僕が一人でやっていたら、倍の額をかけても取れていたか分からない。普段なら、クレーンゲームなんてしてないのだ。
    「ありがとう」
     差し出された羊を、しっかりと抱き締めた。ルチアーノが僕のために取ってくれたのだ。大切にしたかった。
    「別に、礼を言われるようなことはしてねーよ」
     お礼を言うと、彼は恥ずかしそうに目をそらす。その姿がかわいくて、ついつい笑ってしまう。
     レジ袋をもらって、ぬいぐるみを押し込んだ。大きな袋を抱えながら、上の回へと登る。
     二階には、対戦ゲームや大型ゲームが置かれていた。僕の手を引っ張りながら、ルチアーノは言う。
    「対戦しようぜ!」
     ルチアーノは対戦ゲームが大好きだ。ゲームセンターに寄るときは、必ず対戦ゲームをやりたがる。からかうように笑いながら、圧倒的な強さで僕を封じ込めるのだ。
     今日も、ルチアーノは強かった。一切の手加減もなく、淡々と僕を倒していく。リズムゲームもエアホッケーもアクションゲームも、彼の独壇場だった。
    「ひひっ。やっぱり君って、デュエル以外はからきしだよな」
     からかうように笑いながら、ルチアーノは僕の手を引っ張る。その姿を見ていると、負けることなんてどうでもよくなってしまう。
     それに、今日のルチアーノは制服姿なのだ。いつにもまして、年相応の子供のように見えてしまう。子供のようなのに、メイクのせいでどこか大人っぽい印象がするのも、妙な気持ちにさせられる。
    「それは、ルチアーノが強すぎるからでしょ」
     抗議の声を上げながらも、嫌な気持ちはしなかった。手を引かれるままに、次のゲームへと足を進める。散々遊び終えると、次の階に登ることにした。
     三階には、プリクラがずらりと並んでいた。制服姿の女子高生やカップルが、筐体ののれんをくぐって出入りしている。
    「そっか。プリクラがあったな……」
     僕は呟いた。学生のデートと言ったら、プリクラだ。自分には縁のないことだったから、すっかり忘れていたのだ。
    「どうしたんだよ」
     ルチアーノが、怪訝な表情で僕を見る。彼は、プリクラを知らないみたいだった。
    「あれで、写真を撮ろうよ」
     そう提案すると、ルチアーノは少しだけ嫌そうな顔をした。眉に皺を寄せて、微妙そうな声で言う。
    「写真? そんなの、カメラでも撮れるだろ」
    「ただの写真じゃないんだよ。ついてきて」
     ルチアーノの手を引くと、筐体の中へと引きずり込む。布を潜り抜けると、そこには小型の撮影スタジオが整えられていた。記憶の中の光景と、何も変わっていない。
    「プリクラは、特別な写真が撮れるんだよ」
     荷物を置いて、百円玉を入れる。女性のアナウンスが流れて、タッチパネルが点灯した。
    『撮影モードを選んでね』
     選択肢は、僕が知っているプリクラとは全く違っていた。撮影モード、メイクの濃さ、シールの分割など、細かい設定を聞かれる。何も分からないから、適当にボタンを押していった。
    「君、分かってないだろ。そんなんで大丈夫なのかよ」
     呆れたようにルチアーノが言う。
    「たぶん、大丈夫だよ」
     答えながら、僕はルチアーノを撮影場所まで引っ張った。機械の指示に従って、何枚かの写真を撮る。ルチアーノは写真に不馴れなのか、ぎこちない表情でポーズを取っている。意外な一面を見て、来てよかったと思った。
     撮影が終わると、今度は落書きだ。
    「向こうに落書きコーナーがあるから、先に行ってて」
     荷物を抱えながら言うと、ルチアーノはこちらを見ることもなく外へと歩いていった。取り残された飲みかけのジュースを、空いている手で持つ。
     向こうから、ルチアーノの笑い声が聞こえてきた。ひきつるような甲高い声で、ケラケラと笑っている。
    「どうしたの?」
     声をかけながら布野を捲ると、座席の上でお腹を抱えるルチアーノの姿があった。画面を指差して、息を切らしながら言う。
    「これ、見てみろよ。最高だぜ」
     示されるままに画面を見て、僕は絶句した。そこに写されている画像は、恐ろしいものだったのだ。
     僕の顔に、メイクが施されていた。目は大きくぱっちりと拡大され、頬にはチークがつけられている。唇は、赤いリップでぽってりと塗られていた。それだけじゃない。輪郭も女性らしくなっているし、肌の色も、実物より白く染められている。
    「なに、これ」
     僕は呟いた。その反応を見て、ルチアーノがさらに笑う。
    「ひどいもんだな。男のメイクってのは」
     ひどい言い種だが、彼の言う通りだから何も言えない。当のルチアーノは、元来の少女のような顔立ちが幸いして、笑えるような顔にはなっていないのだ。それどころか、顔立ちの美しさが際立っている気がする。なんだか、理不尽だった。
     ケラケラと笑いながら、ルチアーノは慣れた手つきで落書きを進める。僕もペンを手に取り、メイクを変えられないか試すことにした。メイクをナチュラルにしても、あまり変化はない。悔しいが、諦めるしかなかった。
     落書きを終えると、取り出し口からシールが印刷された。カット台へと持ち込んで、半分に切り取る。片方をルチアーノに差し出した。
    「はい、これ。ルチアーノの分」
     受け取ったシートを見て、不思議そうな顔をする。
    「これ、どうするんだよ」
    「取っておくんだよ。手帳に挟んだり、アルバムにいれたりして」
    「ふーん」
     興味なさなそうに答えると、雑にポケットにしまう。そんな彼とは対照的に、僕は大切に鞄の中にしまいこんだ。
     目的を果たしたら、ルチアーノはこの町を出ていってしまう。その時に、このプリクラは思い出の品になるだろうと思った。
     三階は最上階だった。ルチアーノの手を引いて、ゲームセンターの階段を下りる。建物の外に出ると、すっかり暗くなっていた。
     手を繋いだまま、町の中を歩く。夜に染まり始めた町には、ちらほらと街灯の明かりがついていた。子供は、お家に帰る時間だ。
    「なあ、キス、しようぜ」
     不意に、ルチアーノが言った。僕の手を引っ張って、路地裏へと連れ込む。周りに人がいないことを確認すると、僕の胸元を掴んだ。
    「キスしろよ。好きなんだろ」
     無理矢理迫られて、言われるがままに唇を重ねてしまう。柔らかい感触がした。唇を離すと、今度はルチアーノが押し当ててきた。
     そのまま、何度か口づけを交わした。繁華街の路地裏で、制服の男の子とキスをしている。シチュエーションだけを見たら、なんだか犯罪みたいだ。
     唇を離すと、ルチアーノは満足そうに笑った。ぺろりと口元を舐めて、からかうように言う。
    「今、犯罪みたいって思っただろ」
     図星だった。僕が何も言えずにいると、いたずらっぽくひひっと笑う。姿が違っていても、表情は変わらない。いつものルチアーノだった。
    「そろそろ、家に帰らないとな。いい子は帰る時間、だろ?」
    「そうだね」
     僕は答えた。制服姿の子供を遅くまで連れ回していたら、セキュリティに声をかけられてしまうかもしれない。それだけは避けたかった。
    「また、デートしようぜ。今度は、もっといいとこに連れてってくれよ」
     そう言うと、彼は僕に背を向けた。路地裏を出て、どこかへと去っていく。後を追うが、そこにルチアーノの姿はなかった。
     そういえば、制服を褒めていなかったなと、今になって思い出す。次に制服デートをする時には、一番に制服を褒めようと思った。
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