If天ヤム長編書き出し12歳.出逢い
その痩せぎすの野良犬に出逢ったのは、何もない砂漠のような荒野であった。
天津飯は武術の師であり、世界一の殺し屋といわれる男・桃白白と買い出しの帰り道であった。山奥の道場で暮らす天津飯たちは、二、三ヶ月に一度麓の村では買えないような品を街まで調達に行く。この荒野は帰りの通り道であった。
何度も通っている荒野だが、山にいるような狂暴な生物もいない。生き物が住むには厳しい環境なのだろう。仮にいたとしても、桃白白の敵ではないが。つまるところ、特に危険もない荒野だった。
だが、その日はいつもと違った。天津飯の三つの目が異変を捉える。天津飯はすぐに桃白白に知らせた。
「桃白白さま。何かがこっちに向かってきます」
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