ジュゼットの選り好み「僕たちさ、相性いいと思うんだよね」
いったい何を見てそう思ったのだろう。
人気のない中庭のベンチ。遠回しに交際を勧めてくる男子生徒。冷めた頭。
ジュゼット・ドバリーは告白されるに適していない自分の頭が、それをわかっていない男が嫌でたまらなかった。
この男の言う相性が良いというのは、ジュゼットの察知能力に依存するものであり、虚像にすぎない。つまり、相性が良いなどジュゼットは微塵も感じたことはないのである。
しかし、ジュゼットはその男の言葉に口を挟むことなく、お得意の愛想の良い笑みを浮かべてただ黙って聞いていた。
「ジュゼットちゃんさえよければ、付き合ってみない?」
膝に置いていたジュゼットの手に、男がそっと手を重ねる。
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