永遠にあなたのもの「マーヴは俺の恋人だから。もう、あんたのマーヴじゃないんだよ」
ルースターはかつての相棒に肩を抱かれているマーヴェリックの腕を力任せに引っ張った。バランスを崩したその体を後ろから抱きかかえるように腕の中に収め、グースから引き離す。眼前にいる自分に似た男――必要以上に似せようとしているのは己だったが――の視線は依然としてマーヴェリックから離れない。
「マーヴ」
ビクンッ。
グースの呼びかけひとつで腕の中のマーヴェリックが反応したのがわかった。吐息と共に小さく「ぁ、」と零れた声は、ルースターにしか届いていない。
「そうなのか? お前はもう、俺のマーヴじゃない?」
震える体がマーヴェリックの動揺を伝える。ルースターは無意識に腕の力を強めた。あんたは、俺の、恋人だろ。
「マーヴ?」
「あ、ちがう、……その、そんなこと、なくて、」
身動ぎしながら上げた頭をきょろきょろと動かし、マーヴェリックは表情の見えないルースターに拘束を解いてほしいと態度で訴えた。今度は明確に、ルースターの意思で拘束を強める。
「……ッ、ブラッドリー、」
言葉で「放せ」と言われないことは救いであり、同時に腹立たしかった。
明文化されない抵抗は、決して良心によるものだけではなかった。マーヴェリックが抱える弱さと恐れ。そしてルースターの幼い頃から“親友の息子”として向けていた慈しみが、傷つけまいとして半端に抗う意思を伝える。
“俺のマーヴ”なんて、冗談じゃない。呪いのように繰り返される言葉がマーヴェリックの心に巣くっている。
ルースターは苛立ちを湛えてグースを見遣ったが、その視線が絡むことはなかった。グースの瞳はただ一人マーヴェリックを映していて、おそらくマーヴェリックもそうだった。ルースターが自由に動かせるものは、たったひとつ、己の体しかなかった。
「マーヴ、あんたは、俺のものだろ?」
腕の拘束は緩めたくなくて、顔を寄せた。熱い息と共に耳を食む。散々弱いと知っているそこに吸い付き、舌を挿して嬲ると、マーヴェリックの抵抗が激しくなった。拒絶かもしれなかった。
「なぁ、親父の前で言ってくれよ。昨夜みたいに」
ぽた、ぽた、と、腕を濡らす水滴。一粒一粒が大きくて、マーヴェリックが限界まで涙を堪えていたことを想像するのは容易かった。小刻みに震える体。しゃくり上げる喉から漏れる引き攣った声。
昨夜も同じものを腕の中で感じていたはずなのに。
「……“僕は君のものだ”って」
泣きたいのは、俺の方だよ。