さいしょのおはなし「おいしいですか」
「よくわからない」
ミスルンと食事をとるのは8回目だ。
カブルーが政治の世界へ進むことになり、ミスルンがメリニに滞在することを決めてから8回目。
律儀に回数を数えている自分は少し女々しいかもしれない、とカブルーは思う。
食事に誘えば承諾してくれるし、嫌な顔はされない。嫌だと拒絶する欲がないからかもしれないし、なんとも思っていないからかもしれない。
「どうですか。仕事の方は。外交官は早々に切り上げたと聞きましたが」
「パッタドルに任せた。私はダンジョンやモンスターについて調査を行っている。いつまた悪魔があらわれるかわからない。その時はいちはやく見つけ滅ぼす方法を探す」
彼は自分の仕事について、聞かれれば素直に答え、ときおり悪魔を思い返すような表情をした。
3355