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    朧船倭寇

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    朧船倭寇

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    ストーリーとアイテム

    リアムストーリーストーリー1
    ベテラン冒険者のウィリアムは秘境内で仲間と逸れてからずっと1人で探索を続けていたが、ついに数千メートルもあるであろう大樹の元へ辿り着いた。それは普段彼らが経験を積む為に足を運ぶ秘境の最奥にある石化古樹よりもはるかに大きく、その根は地脈のように遥か先まで這っているようだった。大樹を見上げていると、その根本から膝丈ほどある大きな一匹の蜘蛛がウィリアムの元へ近付いて来た。蜘蛛はそれ以上大樹に近寄らないよう立ち塞がりながらも、現れるはずのない人間の対処に困ったのかそのまま黙り込んだ。声帯のない蜘蛛が黙っているのは元からなのだが、ウィリアムにはその蜘蛛が何かを言いたげに視線を彷徨わせこちらの装備を観察し、答えを導き出せず沈黙したように見え、自己紹介してみることにした。「私は冒険者協会のウィリアム。秘境の探索中に見えない壁の隙間から落ちてここまで来てしまった。興味はあるが、君たちの住処やあの樹を荒らすつもりはないから安心してくれと仲間にも伝えてくれるか?」すると蜘蛛は言葉が分かるかのように大樹の根元へ戻り、遠くからこちらを監視していた蜘蛛達の警戒を解いてまたウィリアムの足元へ戻ってくると、地面に一枚の葉を置いた。ウィリアムがその葉を手に取るとこの神聖な場所がテイワットのどこに位置するのか、そして地上との元素濃度や地脈構成の大きな違いなどが頭の中に流れ込んできた。この蜘蛛が今ウィリアムに必要な情報のみを小さな葉として持って来てくれたのだろうか、あるいは、大樹そのものの意思によるものかはわからない。意思が通じたことと蜘蛛が言葉を信用し警戒を解いてくれたことに安堵すると同時に、今受け取った情報からウィリアムは自分にはもう地上に戻る術がないことを粛々と受け止めていた。

    ストーリー2
    それからウィリアムと一匹の蜘蛛は大樹から少し離れた場所で交流を続けた。驚くことに最初言葉が通じたと思ったのは偶然ではなく、地脈からテイワットの情報を受け取って管理している蜘蛛にとっては人間の話す言葉が理解できるのは当たり前のことだったようだ。ウィリアムが「自身が落ちた見えない壁の隙間は何だったのか」と聞くと蜘蛛は「テイワット上の生命が立ち入るべきではない場所には蜘蛛がその糸で障壁を張っている」といった質問の答えとなる情報の葉を一枚持ってくる。どんな謎の答えも分かることに興奮しているウィリアムのおしゃべりは止まることがなく、蜘蛛も相変わらず何も言わないがウィリアムの次の言葉を待つように体を傾けて顔を覗き込むようになった。それはウィリアムが質問をする時、蜘蛛に対してする仕草でもあった。個の意思を感じるその様子に好奇心を抱いたウィリアムはある時、蜘蛛に「君にはやってみたいことや、行ってみたい場所はないのか?」と蜘蛛自身についての質問をしてみた。すると蜘蛛は「ティファレトの蜘蛛はテイワット大陸との接続を持たず、愛と奉仕を以てその環境を保護する」と回答した。つまり一般的なテイワット人が別の次元に行く術を持たないように、彼ら蜘蛛も最初からここから出るようにはできていないらしい。しかしこの先の人生を閉ざされたウィリアムの胸の内には一つの希望とも言える好奇心が芽生えて始めていた。「もしテイワットへの接続が可能であれば、君はどうしたい?」蜘蛛は永く沈黙したのち、一枚の葉を持ってきた。「『モンド出身の男性。両親は商人で、自身は冒険者協会に属し生計を立てている。団員からはウィルと呼ばれ……』なんだ、私の情報じゃないか。ははは!つまり君は私になりたいのか?」蜘蛛は文句を言うように6本の手足で地面を叩いた。

    ストーリー3
    美味いかどうかはわからない。ただ地上と縁を結び、自由になるためその命を我が物にした。
    「ウィ…リア、ム」初めて出した声に返事はなく、彼との交流の場には噛み切れなかった時計や杯、ピアスだけが残されている。これらはテイワット人が聖遺物と呼んでいるものだと思い立って身に付けてみた。ウィリアムがこの場へ現れてからどれほど経ったのだろう?数時間前、ひとまわり小さくなった様子の彼は少し焦ったように蜘蛛に提案をした。「私を触媒にして君が地上へ出るのはどうだ?なに、誰だって初めての冒険は無茶なものさ」蜘蛛は頷き、ウィリアムは意思が通じた上で合意して行動する蜘蛛に願いを託すことにした。いや、もう2度とここから出ることのできない彼には縋るものがそれしかなかったのだ。「私には目の見えない妻がいる。私の代わりに彼女を見守ってくれ。帰れなくて、すまないと……」蜘蛛は同意し、そして奇縁の交流相手を腹の中に収めた。同化するとただの蜘蛛からテイワット上で暮らす元素生命に、そして人の姿へと変わると糸を辿って地上に登り、テイワットへ続く秘境の扉を開けた。そこで見たのは天高く果てのない空、草や岩の間を駆け抜ける風、それが運んでくる大地の香り、大きな木と、人間の城……。世界樹の根に住む蜘蛛はついに情報でしか知らなかった世界に歓迎されたのだ。しかし、同時に大きな過ちに気付いてしまった。「ウィリアム、君は私になりたいのかと聞いたが、そうではない。私は君のように自由に世界を冒険してみたいと、そう言いたかったんだ…」人には命がある、命が終わればその者と交流する術はない。当たり前のことだとしても「君と一緒がよかった」なんて心の無い蜘蛛にはわからなかった。そして、それに気付くにはもう遅かった。

    ストーリー4
    モンド城へやってきた蜘蛛は、世界樹から得た情報を思い出しながらウィリアムの家を訪ねた。具体的に何をすべきかはいまいち分かっていないが、妻を見守ると彼と約束したからだ。しかし人間としての振る舞いに気を付けようと意気込む蜘蛛の記念すべき初ノックは空振りに終わった。室内から目を腫らした婦人が顔を覗かせたからだ。「ウィルが…夢に出てきた夫が言っていたわ。蜘蛛が一匹、私を訪ねてくるだろうって」「おいおい、話が通ってるなら言ってくれよ。しかし…うん。確かにウィリアムの代わりにあなたを見に…見守りに?来た者だ。これからよろしく」と手を握ると「不思議ね。声が彼と全く同じだわ」と婦人は哀しげに微笑んだ。それから蜘蛛は神秘のヴェールで他者からウィリアムだと認識されるよう施すと、冒険者として婦人の生活費を稼ぐことにした。仕事仲間はベテラン冒険者ウィリアムだった頃の記憶と蜘蛛がすり替わったウィリアムの実力に齟齬を覚え、親しみとからかいを含めてザラストロ(役立たず)と呼ぶようになった。ウィリアムがウィルと呼ばれるように、自分も人間の仲間からあだ名をもらったのだと蜘蛛自身は満足していた。そして数十年後、見た目年齢の変わらない蜘蛛に人々は違和感を抱くこともなく、その実力もベテラン冒険者と言える程になり、蜘蛛に人間の生活や人生というものを教えてくれた婦人も往生するまで不自由無い平穏な生活を送れていた。「ウィリアムは私が取り込んでしまった。もっと早く打ち明けるべきだったのにこの生活が終わるのが恐ろしく、また罪悪感から今更あなたに告白するなんて人間としてあまりに醜い生き方だ」「ウィルをあそこから連れ出してくれたのもあなたでしょう。モンドでは、すべての生命が心のままに生きていいの」蜘蛛の体温の無い手を弱々しく握り、盲目の婦人は最期に蜘蛛に言った。「もうウィルの役目を果たさなくていいのよ。だから、彼の名前の半分をあなたが使えばいいわ。これから自由に生きていくのに必要でしょうから」そして婦人の葬式以降夫のウィリアムは忽然と姿を消し、モンド城には新たにリアム・ザラストロという青年が住み始めたのだった。彼の腰には、真新しい風の神の目が輝いていた。

    リアムの衣服
    リアムの服は自分の糸で編んだものだ。世界と世界を隔てる障壁を作るティファレトの蜘蛛にとって自身の体を覆い隠すのは朝飯前だが、ある時パーティーメンバーの持っていた鉄の盾よりも硬いことがバレてしまったことがある。一度注目を浴びた情報を再び隠すことは難しく、リアムは正直に「蜘蛛の糸で編んだ」と告白したが「蜘蛛の糸ならば水で縮まるはずだ」「鎧の素材として使えるのではないか」とより話が広がってしまい、あれよあれよと錬金術師のアルベドに分析してもらうことになった。リアムはこの錬金術師が苦手だった。かつて彼が連れと共に蜘蛛を丁寧に調理して食べたことを同族から聞いていたからだ。しかしそこを突くと錬金術師にもまたリアムが人間を媒介にテイワットへ出てきたという反論の一手がある。この時ばかりはリアムも生活を守るため正体が皆にバレないようにと風神に祈るしかなかったのだが、結果アルベドは「蜘蛛の糸のように複数の糸が重なっていて、確かに使われているタンパク質は希少なものだ。でもそれ以外に大きな特徴はないようだね」とあっさり説明した。それを聞いた人々は不思議がりながらも首席錬金術師よりも正しい答えなど無いとばかりに詮索をやめた。リアムは平穏が守られたことに安堵し、なぜ誤魔化してくれたのかと尋ねた。すると錬金術師はこう答えた。「君は質問をする時、体を傾ける癖があるだろう?ボクの知っているウィリアムにも同じ癖があった。君がモンドを脅かす存在でない限り、ボクが君を排除する理由はないよ」
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    リアムストーリーストーリー1
    ベテラン冒険者のウィリアムは秘境内で仲間と逸れてからずっと1人で探索を続けていたが、ついに数千メートルもあるであろう大樹の元へ辿り着いた。それは普段彼らが経験を積む為に足を運ぶ秘境の最奥にある石化古樹よりもはるかに大きく、その根は地脈のように遥か先まで這っているようだった。大樹を見上げていると、その根本から膝丈ほどある大きな一匹の蜘蛛がウィリアムの元へ近付いて来た。蜘蛛はそれ以上大樹に近寄らないよう立ち塞がりながらも、現れるはずのない人間の対処に困ったのかそのまま黙り込んだ。声帯のない蜘蛛が黙っているのは元からなのだが、ウィリアムにはその蜘蛛が何かを言いたげに視線を彷徨わせこちらの装備を観察し、答えを導き出せず沈黙したように見え、自己紹介してみることにした。「私は冒険者協会のウィリアム。秘境の探索中に見えない壁の隙間から落ちてここまで来てしまった。興味はあるが、君たちの住処やあの樹を荒らすつもりはないから安心してくれと仲間にも伝えてくれるか?」すると蜘蛛は言葉が分かるかのように大樹の根元へ戻り、遠くからこちらを監視していた蜘蛛達の警戒を解いてまたウィリアムの足元へ戻ってくると、地面に一枚の葉を置いた。ウィリアムがその葉を手に取るとこの神聖な場所がテイワットのどこに位置するのか、そして地上との元素濃度や地脈構成の大きな違いなどが頭の中に流れ込んできた。この蜘蛛が今ウィリアムに必要な情報のみを小さな葉として持って来てくれたのだろうか、あるいは、大樹そのものの意思によるものかはわからない。意思が通じたことと蜘蛛が言葉を信用し警戒を解いてくれたことに安堵すると同時に、今受け取った情報からウィリアムは自分にはもう地上に戻る術がないことを粛々と受け止めていた。
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