あたたかく「……あっ」
深夜。終わらなかった課題を片付けようと談話室に居たオレは、物音に顔を上げた。
「お前、今何時だと……」
「もう寝る!すぐ寝るって!!」
呆れ声で呟く来訪者─シオンに慌てて返す。
そっちこそこんな時間に何の用だ、と訊こうとしたところで、いやに覇気のない表情に気付いた。
気まずそうに目線を逸らしたシオンはそのままキッチンへと向かおうとする。
「つーかオマエ、顔色悪くね?」
体調でも優れないのかと歩み寄ると見開かれた瞳がオレを見つめた。
「……!」
「なんか悪い夢でも見たのか?」
「……見たとしてもお前には関係ない」
その返事は肯定だが、予想通り素直な反応が返ってくる訳はなかった。
めんどくせーヤツ、という気持ちとそんなときでも甘えを見せようとしない姿に少しもどかしさを感じる。
「……ホットミルクでも淹れてやるよ」
「は?いや、自分で」
「いーから、座ってろ」
どんな悪夢を見たのかはわからない。人に話したくないことなら、オレには余計話す気なんてないだろう。それでもせめてできることがあるとすれば、落ち着く何かを与えることくらいしか思い付かなかった。
今はこれが最善、だと思う。
シオンを追い越してキッチンへ向かうと後からシオンが着いてきた。
「お前みたいな雑な奴に任せられるか」
「うるせー、それぐらいできるっつーの」
少し色の戻った顔に安堵しながら、シオンの小言を耳にオレは準備を進めた。